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2025.12.11
孤独死の遺品整理は危険?プロに依頼すべき3つの理由

孤独死の遺品整理は、単なる片付けではなく、感染症対策や消臭作業を伴う非常に専門性の高い作業です。突然の訃報に深い悲しみと動揺のなかで、「何から手をつければいいのかわからない」「部屋の状態が酷く、どう処理すればいいのか途方に暮れている」と感じている方もおられるのではないでしょうか。
しかし、孤独死の現場において、ご遺族だけで無理に遺品整理や清掃を行う行為は絶対に避けてください。なぜなら、以下のリスクがあるため、プロの特殊清掃が必須となります。
- 理由①目に見えない致死的な感染症リスクを回避するため
- 理由②市販品では除去不可能な「死臭」を根絶するため
- 理由③害虫の発生と建物の腐敗を食い止めるため
この記事では、孤独死の現場で特殊清掃が必須な理由や、安全に完了させるステップ、業者の選び方を解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

孤独死現場で特殊清掃が必須な3つの理由

孤独死の現場は、一般的な掃除とは根本的に異なります。「費用を浮かせたい」と安易にご遺族が入室することは、取り返しのつかない健康被害やトラブルを招く原因となります。なぜ、プロによる特殊清掃が不可欠な理由を解説します。
理由①目に見えない致死的な感染症リスクを回避するため
孤独死の発見が遅れた現場では、ご遺体の腐敗に伴い、目には見えない病原菌やウイルスが爆発的に増殖しています。血液や体液からは、B型肝炎、C型肝炎、結核菌などの感染リスクが想定され、これらは空気中にも浮遊している可能性があります。
市販のマスクや手袋だけの軽装備で現場に入ることは、自殺行為に等しい危険な行為です。専門業者は、防護服や防毒マスクを装着して、厚生労働省のガイドライン等を踏まえた適切な消毒作業により、リスクを完全に遮断しています。
参考:感染症情報|厚生労働省
理由②市販品では除去不可能な「死臭」を根絶するため
孤独死現場特有の強烈な腐敗臭(死臭)は、壁紙や床の表面を拭くだけでは決して消えません。体液や脂分がフローリングの隙間を通り越して、床下のコンクリートや建物の基礎部分にまで深く浸透しているケースが多いためです。
このレベルの臭気除去には、汚染された建材の解体撤去に加え、業務用の高濃度オゾン脱臭機による分子レベルでの分解・酸化が必要です。表面的な清掃しかできない一般の方や不用品回収業者では、においが必ず再発してしまいます。
なお、特殊清掃については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:特殊清掃とは?通常の清掃との違いや失敗しない業者選びのポイントもご紹介!
理由③害虫の発生と建物の腐敗を食い止めるため
腐敗した体液は、ウジやハエ、ゴキブリなどの害虫を大量に発生させる原因となります。これらの害虫は、細菌を媒介して近隣住宅へ拡散させるだけでなく、建材を腐食させ、建物の資産価値を著しく低下させかねません。
特殊清掃業者は、専用の薬剤を用いて害虫を駆除・防除すると同時に、体液による建材の腐食進行を食い止める処置を行います。早期にプロが介入すれば、将来的な大規模リフォームのリスクを最小限に抑えられます。
孤独死の遺品整理を安全に完了させる3つのステップ

現場の安全確保と原状回復をスムーズに進めるためには、正しい手順で行動しなければなりません。ここでは、パニックにならずに事態を収拾するための具体的なアクションプランを提示します。
ステップ①警察の入室許可後に特殊清掃業者へ即連絡する
孤独死の場合、まずは警察による検視が行われ、事件性がないかが確認されます。この間は室内への立ち入りが制限されますが、警察から「入室許可」が出たら、直ちに特殊清掃業者へ連絡を入れてください。
発見から時間が経過するほど、腐敗や汚染は進行しており、近隣住民への悪臭被害も拡大します。「遺品整理業者」ではなく、「特殊清掃」の技術を持った業者に連絡して、緊急の消臭と汚染物の除去(初期対応)の依頼が優先です。
なお、遺品整理と特殊清掃の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:遺品整理と特殊清掃の違いとは?特殊清掃が必要な理由や費用相場をご紹介!
ステップ②感染症対策済みの業者に見積もりと作業を依頼する
業者を選ぶ際は、必ず現地見積もりを依頼しましょう。電話口だけの概算見積もりでは、現場の状況(汚染範囲や荷物の量)が正確に伝わらず、後から追加料金が発生するトラブルの原因となります。
このため、見積もりの際は、以下の点を確認してください。
- 特殊清掃(消臭・消毒)と遺品整理を一括で対応できるか
- 感染症対策のガイドラインに沿った作業を行っているか
- 「オゾン脱臭」などの専門機材を保有している
また、複数の業者から相見積もりを取れば、適正価格を把握しやすくなります。しかし、安さだけで選ぶと、においが取りきれないなどの不備が起きやすいため注意しなければなりません。
参考:感染対策マニュアル・業務継続ガイドライン等|厚生労働省
ステップ③原状回復工事と遺品整理を並行して進める
特殊清掃によって感染リスクや悪臭がある程度除去された段階で、本格的な遺品整理(仕分け・搬出)と原状回復工事を行います。体液が染み込んだ床や壁紙の張り替えなど、リフォームが必要になる場合も多いです。
また、賃貸物件の場合は、管理会社や大家さんと相談しながら、国土交通省のガイドライン等を参考に、どこまでの修繕が必要かを取り決めます。遺品整理のなかに貴重品や重要書類が含まれている可能性があるため、信頼できる業者による丁寧な仕分けが大切です。
信頼できる特殊清掃・遺品整理業者の3つの選び方

孤独死の現場に対応できる業者は数多く存在しますが、技術力や対応の質には大きな差があります。後悔しないために、契約前に必ずチェックすべきポイントを解説します。
ポイント①特殊清掃の専門技術と実績があるか
一般的な不用品回収業者や便利屋では、孤独死現場特有の感染症対策や完全な消臭を行う技術を持っていない場合があります。業者のウェブサイトや問い合わせ時に、以下の点を確認してください。
- 「事件現場特殊清掃士」などの有資格者が在籍しているか
- 過去の施工事例(ビフォーアフター写真など)を公開しているか
- オゾン脱臭機などの専用機材を自社で保有しているか
一般社団法人事件現場特殊清掃センターのような業界団体に加盟しているかも、信頼性を判断する1つの指標となります。表面的な清掃だけでなく、根本的な消臭・除菌ができる専門業者の選定が不可欠です。
ポイント②見積書の内訳が明確で追加請求がないか
金銭トラブルを防ぐために、必ず訪問見積もり(現地調査)を依頼して、詳細な見積書を受け取ってください。「作業一式」といった大雑把な記載ではなく、「人件費」「処分費」「消臭薬剤費」「特殊清掃作業費」などが細かく明記されているかを確認しましょう。
また、契約前に「見積もり以外の追加料金は発生しないか」をはっきりと確認して、書面やメールなどの形に残るものでの約束の取り付けが大切です。優良な業者は、不測の事態(畳の下まで汚染が進んでいた場合など)の追加費用についても、事前に可能性を説明してくれます。
ポイント③対応が丁寧でグリーフケアの心があるか
技術や費用と同じくらい大切なのが、スタッフの対応力です。電話対応や現地見積もりの際に、ご遺族の悲しみに寄り添う姿勢(グリーフケア)があるかを見てください。
孤独死の現場はセンシティブな状況のため、近隣住民への配慮(作業着を目立たないようにしたり、作業時間を調整したりするなど)ができるかも大切なポイントです。質問に対して言葉を濁さず、誠実かつ明確に答えてくれる担当者であれば、安心して作業を任せられます。
孤独死の遺品整理と特殊清掃にかかる費用の目安

もっとも気になる費用について解説します。孤独死の現場では、「特殊清掃費用」と「遺品整理費用」の両方がかかるため、通常よりも高額になる傾向があります。ここでは、一般的な相場と内訳を紹介します。
目安①特殊清掃の費用相場
特殊清掃の費用は、汚染の度合いや発見までの日数によって大きく変動します。以下のとおりです。
◆汚染レベルでの特殊清掃の費用相場
|
汚染レベル |
発見までの期間(目安) |
費用相場(目安) |
作業内容 |
|
軽度 |
数日〜1週間 |
5万円〜15万円 |
表面の清掃、除菌、簡易消臭 |
|
中度 |
1週間〜1か月 |
15万円〜40万円 |
汚染箇所の除去、オゾン脱臭 |
|
重度 |
1か月以上 |
40万円〜100万円以上 |
床解体、大規模な消臭、リフォーム |
発見までの時間が経過するほど汚染が床下や建材の深部まで浸透するため、解体工事などの大掛かりな作業が必要となり、費用が高額になる傾向があります。「重度」のケースでは、単なる清掃では対応しきれず、リフォーム工事を前提とした作業になる場合が一般的です。
提示した金額はあくまで目安であり、建物の構造や家財の量によっても最終的な見積もりは変動するため、必ず現地調査を依頼して正確な内訳を確認するようにしてください。
目安②遺品整理の費用相場
遺品整理の費用は、部屋の広さと荷物の量で決まります。こちらは、通常の遺品整理と同等の相場感ですが、汚染された家財の処分には追加費用がかかる場合があります。
- 1R・1K:3万円〜8万円
- 1DK・2DK:10万円〜25万円
- 3LDK以上:20万円〜50万円以上
また、業者によって「トラック詰め放題パック」などを設定している場合もありますが、孤独死の現場では注意が必要です。荷物の量だけでなく、エレベーターの有無や搬出経路の状況、作業に必要な人員数によっても金額は大きく変わります。
このため、パック料金の安さだけで判断せず、必ず訪問見積もり時に「汚染された家財の処分費」が含まれているかの細かな確認が、追加請求トラブルを防ぐポイントです。
目安③リフォームや原状回復にかかる追加費用
特殊清掃と遺品整理で部屋が空になっても、汚染された床の張り替えや、染み付いたにおいを取るための壁紙交換など、リフォーム費用が必要になる場合があります。賃貸物件の場合、次の入居者を迎えるために完全な消臭が求められます。
オゾン脱臭機を数日間稼働させる費用や、クロス(壁紙)の全面張り替え費用として、別途数万〜数十万円が必要になるケースを想定しておきましょう。
孤独死の遺品整理でよくある3つの質問

孤独死の遺品整理でよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①賃貸物件で孤独死した場合の損害賠償はどうなりますか?
賃貸物件で孤独死が発生した場合、原則として連帯保証人や相続人が原状回復費用を負担します。しかし、発見が早く自然死扱いであった場合は、通常の経年劣化の範囲内とされるケースもあります。
一方で、発見が遅れて特殊清掃が必要になった場合は、善管注意義務違反として損害賠償を請求される可能性が高いです。しかし、国土交通省のガイドラインでは、自然死や不慮の事故死による心理的瑕疵(事故物件化)に伴う損害賠償は認められない傾向が見られます。
このため、まずは契約内容を確認して、専門家への相談をお勧めします。
参考:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン|国土交通省
なお、事故物件については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【プロが教える】事故物件とは?契約で後悔しないための3つの注意点をご紹介!
質問②特殊清掃や遺品整理の費用は、保険適用されますか?
ご契約の内容によっては、火災保険の「特約」や「孤独死保険(少額短期保険)」が適用される場合があります。賃貸物件の場合、家主が加入している保険で原状回復費用が賄われるケースや、故人が加入していた火災保険に「借家人賠償責任補償」などの特約が付いていれば、費用負担が大幅に軽減される可能性があります。
契約書を確認するか、保険証券が見つからない場合は、遺品整理業者と一緒に探してもらいましょう。
質問③費用を抑えるために自分でできることはありますか?
費用を抑えたいお気持ちは理解できますが、汚染現場でのご遺族による作業は推奨できません。唯一可能な対応といえば、感染リスクのない場所(玄関の外やベランダなど、汚染源から離れた場所)にある物品の整理や、行政手続きの迅速な進行です。
汚染された室内での仕分け作業は、感染症のリスクだけでなく、精神的なダメージも大きいです。無理をせずプロに任せて、相続手続きなどの「ご遺族にしかできない業務」に注力してください。
孤独死の整理は業者へ依頼!危険な作業を手放して心の整理を!

突然の出来事で心が追いつかないなか、無理をして自分たちだけで解決しようとする必要はありません。汚染された現場での作業は、ご遺族の心身に計り知れない負担を強いるものです。
危険な清掃や消臭作業は専門知識を持つプロに任せて、まずは自分の心のケアと、故人を偲ぶ時間を大切にしてください。孤独死の遺品整理を安全に完了させるステップは、以下のとおりです。
- ステップ①警察の入室許可後に特殊清掃業者へ即連絡する
- ステップ②感染症対策済みの業者に見積もりと作業を依頼する
- ステップ③原状回復工事と遺品整理を並行して進める
まずは、複数の業者に問い合わせ、現地見積もりをとることからはじめてみてください。あなたが安心して前を向けるよう、プロたちが全力でサポートしてくれるに違いありません。

