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2024.03.25
【プロが教える】市街化調整区域の不動産は売買できない?調整区域の特徴から売却方法まで徹底解説!
日本の国土には、自然保護の観点から開発が制限されている地域があり、これらのエリアは「市街化調整区域」と称されています。市街化調整区域内にある不動産を売買する際は、住宅用地とは異なる特別な考慮が必要です。
この記事では、市街化調整区域内の不動産の特徴や売却方法、売却できないときの活用方法について解説します。市街化調整区域の不動産取引を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
市街化調整区域とは?
市街化調整区域とは、都市計画法により定義された都市計画区域内で、都市の拡大を抑制すべきエリアを指します。これは、市街地形成の計画として特定された「市街化区域」とは対照的に、開発が厳しく制限され、自然環境や農地の保全を目的としています。
市街化調整区域と市街化区域の線引きは、計画的な都市開発を促進しつつ、自然環境の保全というバランスを取るために重要です。この区分によって、都市の持続可能な成長が促され、適切な地域ごとに必要な施策が講じられます。
市街化調整区域の不動産が売買しにくい3つの理由
市街化調整区域の不動産が売買しにくい理由には、次の3つが挙げられます。
- 建築に制限がある
- ローン審査が通りにくい
- インフラが整備されていない
項目ごとに詳しくみていきましょう。
1.建築に制限がある
市街化調整区域の不動産が売買しにくい理由のひとつは、建築に関する厳しい規制により、新たに建物を建てることが困難であることです。
市街化調整区域内で建物を建てるには、農業や林業、漁業など特定の条件に合致する建築物に限られ、その他の目的での建築は原則として認められていません。このような制限があるため、市街化調整区域の土地や家は、特に建築を希望する購入者にとって魅力が低く、需要が少なくなり、不動産価格にも影響を及ぼすことがあります。
2.ローン審査が通りにくい
市街化調整区域における建築の厳しい規制は、担保としての不動産価値を低下させ、結果として金融機関からの住宅ローン融資を受けにくくします。従って、市街化調整区域の不動産を購入しようと考える買主は、比較的多額の自己資金を準備できる状況でなければローン審査を通過するのが難しくなります。
このような資金調達のハードルは、売主にとっても買い手が見つかりにくくなる一因となり、不動産の売却が困難になるのです。
3.インフラが整備されていない
市街化調整区域は、もともと人が暮らすことを想定しておらず、既存の建物がない土地では電気、水道、ガスといった基本的なインフラが整備されていません。
インフラを自己負担で整備する場合、コストが大きな問題となります。土地の状況によってはインフラ整備に高額な費用がかかることもあり、売買に大きく影響を及ぼします。
さらに、市街化調整区域において自分でインフラを整えた場合、自治体の助成金などの支援を受けられないケースもあるため、財政的な負担はさらに重くなる可能性が高いです。
市街化調整区域でも売買しやすい不動産の特徴は3つ
市街化調整区域内でも、比較的売買しやすい不動産もあります。主な特徴は次の3つです。
- 開発許可を取得して建てられた物件
- 開発許可が得られる可能性のある土地
- 用途地域内にある土地や物件
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.開発許可を取得して建てられた物件
市街化調整区域内で新たに開発許可を取得することは一般に困難であるため、開発許可をすでに持っている物件は、その稀少性と手続きの煩雑さを避けることができる点で、相対的に高い価値を有しています。
このような物件は、将来的に再建築を考慮している購入者や同業者にとって、売買しやすく魅力的な選択肢です。
2.開発許可が得られる可能性のある土地
市街化区域に隣接または近接しており、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成している地域では、開発許可を受ける可能性が高まります。具体的には、おおむね50以上の建築物が連続して存在する地域であれば、開発許可を受けやすいとされています。
開発許可が得られる可能性のある土地は、将来的に大きな価値を持つ可能性があり、特に都市計画法や地方自治体の方針に適合する場合、その土地は不動産市場において高い需要を見込むことができるでしょう。
3.用途地域内にある土地や物件
用途地域とは、その地域ごとに建物の使い道(例えば、住宅地域に工場を建てることが禁止されるなど)を決める制度であり、市街化調整区域は通常、市街化を抑制する目的で設定されるため、原則としては用途地域が定められていません。
しかし、過去の開発によって例外的に用途地域が設けられたケースも存在し、これらの地域にある土地や物件は、建て替えなどの開発が比較的容易であるため、売却もしやすいとされています。
市街化調整区域により売買しにくい不動産の特徴は3つ
一方で、市街化調整区域の中でも、より売買しにくい不動産があります。主な特徴は次の3つです。
- 農地
- 開発許可が得られない土地
- 無許可の物件
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.農地
国は農家の数を減らしたくないという政策的意向のもと、農地の転売を農家以外の人々に制限しており、実質的に農業を営む意志がある農家にのみ農地の売却が可能です。
なお、農地の転用許可を得るためには、農業委員会などの関連機関に対し、転用後の土地利用計画が地域の都市計画や農業振興の方針に適合していることを証明する必要もあることから、売却が難しいとされています。
農地の売買や転用を考える際は、これらの法的要件を十分に理解し、適切な手続きを踏むことが重要です。
2.開発許可が得られない土地
市街化調整区域内は、都市計画法に基づいた厳格な立地基準を満たさない限り、基本的に建物の建設が許可されません。たとえば、都市計画法第34条の「市街化区域に隣接したおおむね50以上の建築物が連たんしている地域」など、条件を満たす土地でない限り、開発許可を受けることは困難です。
市街化調整区域内の土地を所有している場合、開発許可の取得が困難であることを理解し、土地の利用可能性や将来性を慎重に評価する必要があります。開発許可が得られない可能性が高いという現実は、土地の利用や売却計画において重要な考慮事項です。
3.無許可の物件
市街化調整区域内における建築活動は、農家の住宅や温室など特定の構造物に関しては許可なしで建設が可能です。
一方、標準的な住宅建築などの場合は行政の許可を得る必要があります。それにもかかわらず、許可を受けずに建てられた建物が存在するケースが散見されます。
市街化調整区域が設定された当初は、手続きの不明瞭さが原因で、規定が定まる前や手続きの混乱期に無許可で建てられた建物が珍しくありませんでした。こうした無許可の物件は、将来的に建て替えが認められないため、市場における価値が著しく低下し、その結果売却が困難になるという問題を抱えています。
市街化調整区域の不動産を売却する4つの方法
市街化調整区域の不動産は売買しにくいとされますが、売却方法はあります。主に次の4つが挙げられます。
- 専門の仲介業者へ依頼する
- オークションに出品する
- 空き家バンクに登録する
- 個人間で売買する
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.専門の仲介業者へ依頼する
市街化調整区域内の土地や物件は、一般の市街化区域に比べて取引が複雑であり、流通量も少ないため、専門的な知識や経験を積んだ不動産会社や担当者が限られています。土地の売りやすさは案件により異なり、特定条件の確認や適切な売却戦略の提案が求められるため、その分野に特化した仲介業者に依頼することが重要です。
これにより、売却プロセスがスムーズに進行し、最適な取引が実現しやすくなります。全国には数多くの不動産会社が存在しますが、市街化調整区域の取引に特化した経験豊富な会社を選ぶことが、成功に向けた第一歩です。
2.オークションに出品する
ネットオークションを利用して市街化調整区域の土地や物件を売買する方法です。
ヤフーオークションのようなプラットフォームで「土地」と検索すると、出品がヒットし、中には市街化調整区域内の土地もあります。取引する場合、出品者は「市街化調整区域であること」を明確に記載し、購入希望者に対して正確な情報を提供しましょう。
オークションは幅広い層の目に触れる機会を提供するため、市街化調整区域の土地であっても、買い手を見つける可能性を高めることができます。ただし、オークションでの取引はその性質上、売買の条件や手続きにおいて、通常の不動産取引とは異なる注意点があるため、出品前には十分な準備と理解が求められます。
3.空き家バンクに登録する
近年、自然豊かな地域への移住を望む人が増えています。移住希望者をターゲットとした空き家バンクサービスを提供している地域であれば、そのプラットフォームに登録し、売却相手を見つけるのも有効な手段です。
空き家バンクは、地域によって異なる特色を持ち、移住希望者や住宅を求めている人々に対して、手頃な価格の物件を提供することで、新たな居住者の誘致を図っています。このサービスを利用することで、売り手は比較的スムーズに売却先を見つけることが可能になり、一方で買い手は自然環境に恵まれた地域での新生活を始めることができます。
4.個人間で売買する
知人同士など特定の関係性がある場合、不動産の売買を個人間で行うことがあります。この方法の最大のメリットは、仲介業者を介さずに取引を行うため、仲介手数料が発生しない点です。
しかし、契約書や重要事項説明書など、法律的に必要な書類を自分で作成しなければなりません。加えて、個人間の取引では、自ら購入希望者を見つける必要があります。
不動産市場においては仲介業者が多くの潜在的購入者へアクセスできるのに対し、個人間での売買ではそのような広告活動が困難であるため、適切な買い手を見つけるまでに長い時間がかかる可能性にも考慮が必要です。
したがって、法的知識や不動産取引に関する経験が乏しい場合は、専門家の助言を求めることが賢明な選択となります。
市街化調整区域の不動産を売買する際の流れ
市街化調整区域の不動産売買をスムーズに進めるための基本的な手順は次のとおりです。
まず、行政機関への調査を実施します。この段階では、不動産業者が役所等に情報を求めて「行政調査」を行うのが一般的です。
この調査を通じて、売却を検討している物件が満たすべき条件や規制に関する詳細を把握します。また、自らも直接行政に問い合わせることで、さらに具体的な情報を収集することが可能です。
次に、市街化調整区域内の不動産は売却が難しいケースがあるため、買取業者への問い合わせも検討します。買取業者を利用することで、市場価格の約8割程度の価格で迅速に売却できる可能性があります。
その後、仲介業者を通じた売却を開始します。市街化調整区域の取扱いに精通した仲介業者を選定し、「専任媒介契約」を結ぶことを推奨します。専任媒介契約は、仲介業者に対して売却活動における動機付けを提供し、また、売主自身が買主を見つけた場合にも取引が可能です。
最終的には、仲介業者と共に適切な売却条件を設定し、市場に物件を出します。買主が見つかり、双方の条件が一致した場合には売買契約を締結し、取引完了です。
市街化調整区域の売買でよくある3つの質問
最後に、市街化調整区域の売買でよくある質問にお答えします。
- 質問1.市街化調整区域の不動産を売買しやすくするコツはある?
- 質問2.市街化調整区域を売買する際の注意点は?
- 質問3.市街化調整区域の不動産が売買できないときの活用方法は?
それぞれ詳しくみていきましょう。
質問1.市街化調整区域の不動産を売買しやすくするコツはある?
市街化調整区域で不動産を効率よく売却するコツは、潜在的な買い手の特定です。
たとえば、農家の方々は開発許可なしに自宅建設が可能なため、購入候補となります。加えて、近隣で事業を展開する業者は、従業員や顧客用の追加駐車スペースを求めている可能性があり、これもまた購入の機会となるでしょう。特に隣接地の所有者へのアプローチは、売却の基本戦略です。
既存建物がある場合、その建物を活用できる購入者を見つけることが、成約につながりやすくなります。市街化調整区域内の不動産売買に精通している地元の不動産会社に相談することは、適切な買い手を見つける上で大変有効です。
質問2.市街化調整区域を売買する際の注意点は?
市街化調整区域にある土地の売買を考える際、どのような土地を扱っているのかを正確に理解することが重要です。
まず、土地が属する自治体の区域指定制度について確認します。市街化調整区域内でも、特定のエリアは住宅や商業施設の建設が許可される場合があり、もし手放そうとしている土地がそのエリアであれば、土地の魅力が向上し、売却が容易になる可能性があります。
土地の地目の確認もかかせません。土地の地目によっては、特定の審査や許可が必要になる場合があります。たとえば、農地の場合は農業委員会の審査を経て売却が可能であり、農地以外の用途に転用する場合は更なる手続きが必要です。
また、土地上の建物が市街化調整区域の線引き前に建てられたものか、それとも線引き後に建てられたものかを把握することも大切です。この情報は、土地の登記簿や固定資産税課税台帳から得られます。
これらの事前確認を通じて、市街化調整区域内の不動産売買をより円滑に進めることができます。それぞれのポイントに注意を払い、適切な手続きを踏むことが、成功への鍵となるでしょう。
質問3.市街化調整区域の不動産が売買できないときの活用方法は?
市街化調整区域内の不動産が売却できないときに考慮すべき活用方法として、コインパーキングの設置や不動産を賃貸に出すという2つのアプローチがあります。市街化調整区域は人口が多い市街化区域に隣接していることが多く、コインパーキングへの需要は一定程度見込めます。
コインパーキングの利点は、新たな建築物の建設を必要とせず、開発許可が不要である点です。この方法なら、不動産が売れるまでの間、維持費の負担を軽減しつつ収益を上げることが可能です。
一方で、不動産を賃貸市場に出すことも有効な戦略です。たとえ古い家であっても、適切な管理と手入れを行うことで、市街化調整区域内の低価格住居を求める人々に魅力的な選択肢となります。
更地の場合は、資材置き場や追加の駐車場として貸し出すこともできます。売却が長引くことで仲介手数料がかさんでしまうよりも、たとえ賃貸収入が低くても固定資産税の負担を軽減し、利益を得ることができれば、それに越したことはありません。
このように市街化調整区域内の不動産を効果的に活用し、売却できない期間も賢く乗り切るのがおすすめです。
まとめ
市街化調整区域内の不動産は、建築に関する制限があるため一般的に売却が難しいとされています。しかし、その土地の位置や地目、既存建物の状況によって、実際に売却できる可能性は大きく変わります。
市街化調整区域の特性を理解し、地域内での売買に関する豊富な経験を持つ不動産会社を選ぶことが、売買をスムーズにさせるコツです。この記事を参考に、市街化調整区域の不動産売買を賢く進めていきましょう。
なお「ビリーフ株式会社」は不動産の買取・仲介だけではなく、不動産に関するさまざまなご相談を承っております。
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