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2024.06.21
立ち退き料とは?費用相場や支払いまでの流れ、立ち退き料を安く抑える方法を徹底解説!
立ち退き料とは、更新が可能な契約である普通借家契約のもとで、貸主が契約を解除する際に、借主に対して支払う金銭的給付です。立ち退きは、正当な理由と認められない場合は実施ができず、家の種類によって相場も異なります。
本記事では、立ち退き料の概要や費用相場、支払いまでの流れについて解説します。また、立ち退き料を安く抑える方法やよくある質問なども解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
立ち退き料とは?
まずは、立ち退き料の概要について解説します。
- 立ち退き料が生じる法的根拠
- 正当事由の判断基準
- 立ち退き料と正当事由の関係性
- 立ち退き料が必要なケースと不要なケース
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.立ち退き料が生じる法的根拠
立ち退き料は、普通借家契約のもとで貸主が契約を解除する際に、借主に対して支払う金銭的給付です。普通借家契約とは、更新が可能な契約であり、立ち退き料の支払いには法的根拠が存在します。
法的根拠は、借地借家法第28条に定められていますが、貸主が契約を解除する場合、正当な理由が必要です。また、貸主が物理的な給付を申し出た場合、給付は解約の正当性を補完する要素として考慮されます。
この法的規定により、立ち退き料の支払いは、貸主からの契約解除が「正当」であると認められる場合にはほぼ避けられません。
2.正当事由の判断基準
立ち退き料の支払いにおける正当事由の判断基準は、以下の要因にもとづきます。
主たる要因
- 貸主と借主の建物の使用を必要とする事情
貸主が建物を自ら使用する必要がある場合や、借主が使用を続けるのが困難な状況
従たる要因
- 建物の賃貸借に関する従前の経過
過去の賃貸期間や、借主との契約の経緯などが考慮される
- 建物の利用状況
建物がどのように使用されているか、維持管理の状況などが評価される
- 建物の現況
建物の物理的な状態や修繕の必要性などが判断材料となる
- 財産上の給付の提案
貸主が立ち退きと引換えに借主に財産上の給付を提案した場合、その内容と提案の真意が評価される
正当事由の判断には、全体の状況と合わせて「正当な事由」があるかどうかが判断されます。
3.立ち退き料と正当事由の関係性
貸主が契約を解除する際、強い正当事由がある場合、立ち退き料の額は相対的に低くなるケースが多いです。これは、貸主が自己の使用を目的とするなど、強力な理由がある場合に該当します。
このような状況では、「自己使用の都合性」が認められ、貸主の需要が明確であり、法的に保護されるべき合理的な理由と見なされます。
一方で、貸主が単に売却を望んだり、建物の建て替えを希望したりする場合など、正当事由が弱いと十分な理由とは認められず、高額な立ち退き料を支払わなければなりません。立ち退き料は、借主に与える不便や損害を補償する形で正当性を高める手段です。
そのため、立ち退き料は、貸主の立ち退き要求の正当性を補完するための経済的な手段であり、正当事由の強さに応じてその額が変動するのが一般的です。
4.立ち退き料が必要なケースと不要なケース
立ち退き料が必要なケースと不要なケースは、以下のとおりです。
立ち退き料が必要なケース
- 大家が自らの都合で退去を求める場合
- 建物を建て替える際
- 再開発プロジェクトによる立ち退き要求の場合
立ち退き料が不要なケース
- 借主が契約違反をしている場合
- 定期建物賃貸借契約が満了した場合
- 契約に明確な期限が設定されている場合
- 建物の老朽化が進んでおり、安全上の重大な危険がある場合
建物の老朽化による安全上の問題が発生している場合、立ち退き料を支払う必要性がないケースが多いです。ただし、これは状況によって異なるため、具体的な状況次第で判断されます。
【パターン別】立ち退き料の相場
次に、立ち退き料の相場をパターン別で紹介します。
- 賃貸住宅
- 一軒家
- 分譲マンション
- 店舗・テナント
- 事務所・オフィス
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.賃貸住宅
アパートやマンションなどの賃貸住宅では、一般的に賃料の3~6か月分程度が目安です。しかし、立ち退き料の算出には一律の計算式が存在するわけではなく、具体的な金額はケースごとの事情や交渉によって大きく異なります。
そのため、貸主から具体的な金額が提示されるまで、正確な費用を把握するのは難しいです。立ち退き料の交渉に際しては、地域の市場価格や物件の条件、利用期間なども考慮されるため、状況に応じて柔軟に対応する必要があります。
2.一軒家
一軒家の立ち退き料の相場については、一般的に賃料の約10か月分とされていますが、これは法定の基準ではありません。しかし、実際の立ち退き料は、立ち退きを要請する事情や借主の移転に伴う費用も考慮されます。
たとえば、同じ家賃10万円の戸建てから家賃12万円のマンションへの転居を考えた場合、以下のような費用が考慮されます。
- 新居のマンションの家賃が高い場合の家賃差補償(2年分の差額)
- 引っ越し代金
- 仲介手数料、礼金、敷金(新居の家賃の1か月分ずつ)
- 通信環境の移設費用
- 新居での火災保険料
これらを合計した立ち退き料の計算例は、立ち退き前の戸建ての賃料と新居のマンションの賃料の差額を24か月分に引越代金、仲介手数料等を加算した結果、約97万円です。これは、家賃10万円の10か月分にほぼ相当します。
3.分譲マンション
分譲マンションの建て替えに際しては、立ち退き料の支払いは発生しません。分譲マンションの所有者が自己所有する部分に対して、売渡請求権が行使されるためです。
建て替えを推進する管理組合は、建て替えに反対する住民に対して売渡請求権の行使が可能です。所有者が自らの意志で売却を拒否していた場合でも、法的に売買契約が成立し、所有者は自動的に所有権を失います。
そのため、分譲マンション所有者は立ち退き料ではなく、自身のマンション部分の時価に相当する金額を受け取れます。この金額は立ち退き料とは異なり、所有していた不動産の市場価値にもとづいて算出されるものです。
4.店舗・テナント
店舗やテナントの立ち退き料の相場は、一般的に賃料の2~3年分程度です。店舗の移転に伴う費用や、移転による売り上げ減少、常連客の喪失など、事業活動に影響するさまざまな要因をカバーするためです。
立ち退き料はただの移転費用補填以上の意味を持ち、以下が費用の詳細となります。
- 移転費用
新店舗への移転にかかる費用、内装工事、および物理的な移転作業の費用
- 賃料差額補償
旧店舗と新店舗の賃料差がある場合、その差額を補償する必要がある
- 営業補償
移転による営業の中断から生じる収益損失の補償
- 固定費用の補償
移転期間中も発生する固定費用や従業員への休業補償に対する費用
- 借家権の喪失補償
立ち退きにより消滅する借家権の対価としての補償
それぞれの事例によって補償の内容や金額は異なるため、具体的な計算は専門家との相談が必要です。
5.事務所・オフィス
事務所やオフィスの立ち退き料の相場は、一般的に事務所の賃料の1年分が一般的です。たとえば、月額家賃が10万円〜20万円の事務所の場合、立ち退き料として約300万円〜400万円が目安になります。
事務所やオフィスの立ち退き料が、店舗に比べて相対的に低めに設定される理由は、オフィス移転による顧客喪失のリスクが低く、特殊な設備投資の必要性が少ないためです。これらの要因により、事務所やオフィスでは立ち退きに際して大規模な賠償金を求める必要が少なくなる傾向にあります。
立ち退き料を支払うまでの流れは3ステップ
次に、立ち退き料を支払うまでの流れについて解説します。
- ステップ1.立ち退きの申し入れ
- ステップ2.立ち退きに関する条件の提案
- ステップ3.立ち退き料の交渉
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
ステップ1.立ち退きの申し入れ
立ち退きの申し入れは、賃貸契約の定める期間満了の6か月~1年前に実施するのが一般的です。法律によって、貸主が契約を更新しない決定をした場合、期間満了の6か月〜1年前に更新拒否の通知をする必要があります。
また、契約の解約を希望する場合は、最低でも6か月前に解約の意志を通知しなければなりません。この通知は、貸主が「正当な事由」を持っている場合にのみ可能です。立ち退きの申し入れをする際には、理由を明確に伝えなければなりません。
ステップ2.立ち退きに関する条件の提案
借主が新たな住居を見つけやすくなるよう、新居の候補を紹介します。さらに、移転に伴う経済的負担を軽減するために、引っ越し費用の一部または全額を負担する提案や、残りの契約期間に相当する家賃の割引が有効です。
また、借主が不動産会社を通じて住み替えを計画している場合、不動産会社と連携を取りながら進めるようにしましょう。
ステップ3.立ち退き料の交渉
一般的に、交渉は通知後1か月程度で完了するケースが多いですが、双方の要求が大きく異なる場合、交渉は長期化する可能性があります。そのため、立ち退き通知をしたら、迅速に交渉を開始するのが望ましいです。
交渉を始める前に新居の目処をつけ、新居の賃料や引っ越し費用を明確にしておくと、具体的な金額をもとに話し合いが可能です。立ち退き料の交渉では、貸主が最初に金額を提案する場合と、借主が希望する立ち退き料を示してから話を進める場合があります。
具体的な立ち退き時期や料金について双方が話し合い、合意が成立した場合、決定した立ち退き料の金額と支払い条件を確定させます。しかし、交渉は一度決定すると再交渉が難しいため、初回の交渉が重要です。
立ち退き料を安く抑える7つの方法
次は、立ち退き料を安く抑える方法について解説します。それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.入居者が少ないタイミングで交渉を始める
建物の建て替えやリノベーションを計画する際は、新規の入居募集を停止し、自然退去を待って空室率を高めるのがひとつの方法です。空室が7~8割程度に達した時点で、立ち退き交渉を開始すると、交渉の手間と立ち退き料の総額を大幅に削減できる可能性があります。
また、店舗を含むアパートの場合は、店舗のテナントが契約終了やほかの理由で退去するタイミングを見計らうのも重要です。店舗の立ち退きは一般的に高額な補償が必要とされるため、自然退去によりテナントが空くと、大きな節約になります。
2.代替物件を提供する
代替物件の提供も地借家法における「財産上の給付」の一形態として認められており、財産上の給付が必ずしも金銭に限定されるわけではありません。
たとえば、所有者が立ち退きを求める物件の近隣に別のアパートを持っている場合、アパートへの優先的な入居案内をして、立ち退き料の支払いを抑える方法があります。この方法は、借主に新たな住居を提供するとともに、財務的負担を軽減する双方にメリットのある方法です。
3.契約違反の有無を確認する
賃貸契約に違反する行為がある場合、契約解除が可能となり、結果として立ち退き料の支払いが不要になるケースがあります。たとえば、違反となるケースについて、以下があげられます。
- 物件が禁煙とされているのに喫煙していた
- 住居用としてのみ利用可能な物件を商業目的で使用していた
このような場合、貸主は契約違反を理由に契約解除を申し立てが可能です。しかし、用法違反にもとづく契約解除は、裁判に持ち込まれた際に認められない可能性もあります。
裁判所は、用法違反が貸主と借主との信頼関係を根本的に破壊しているかどうかを重視します。そのため、用法違反が確認された場合は、契約解除が適切かを弁護士に相談して慎重に進めましょう。
4.敷金を先に返金する
建物の建て替えや大規模なリノベーションの際には、原状回復の必要がなくなるため、敷金を使用する必要がありません。敷金を退去前に返金すると、借主にとっては大きな経済的負担の一部が解消されます。
店舗や飲食店のように、一般的に敷金が比較的高額で設定されている場合、敷金を返金すれば、テナントの資金繰りにプラスの影響を与えられます。借主はこの返金を新たな事業の立ち上げやほかの投資に回すことが可能です。
5.原状回復義務を免除する
賃貸契約では、借主が退去時に物件を元の状態に戻す義務がありますが、建物の建て替えや大規模リフォームの際には必要ありません。建物が解体される予定であれば、壁の塗り替えや設備の修復といった原状回復作業は無意味なものになります。
そのため、借主に対して「原状回復費用は不要」と伝え、借主の負担を軽減すれば、退去を促せるかもしれません。
6.退去までの賃料を減額する
退去までの賃料を減額すれば、借主が移転に向けて資金を準備する時間が与えられるとともに、交渉過程での良好な関係を維持する手助けとなります。使用貸借契約は、借主の権利を制限し、事実上いつでも退去を求められるようになるため、貸主にとって管理がしやすくなります。
ただし、この契約形態に変更すると、家賃収入が減少するか、完全になくなるため、経済的な影響に対する考慮が必要です。
7.建て替え後の再入居を確約する
借主は移転後に元の場所に戻れるため、商業施設や店舗のテナントにとっては、顧客基盤を維持できるという大きなメリットがあります。再入居の確約を提供すると、借主は新しい建物が完成するまでの不便や不安が軽減され、立ち退きに対する抵抗が少なくなる場合が多いです。
さらに、建設計画に借主の意見を取り入れれば、ニーズに合った施設が提供され、長期的なテナントとしての関係を維持しやすくなります。
立ち退き料の相場でよくある3つの質問
最後に、立ち退き料の相場でよくある質問について紹介します。
- 質問1.立ち退き料の内訳は?
- 質問2.立ち退き交渉に応じてもらいやすい物件と交渉が難しい物件の違いは?
- 質問3.立ち退き料の交渉のポイントは?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.立ち退き料の内訳は?
立ち退き料の内訳は、以下のとおりです。
- 移送・引っ越し費用
マンションまたは借家から立ち退く際に必要な家具や個人所有物の運送、関連保険、手続きの費用を含む。また、移転先の確保にかかる仲介手数料、新居の敷金・礼金、賃料の差額も含まれる
- 慰謝料・迷惑料
環境の変化や引っ越しの手間に対する精神的なストレスに対する補償。借家の場合、賃料の3~6か月分が一般的で、環境変化が大きい場合はさらに増額される
- 権利の補償
マンションやアパートでは借家権、店舗では営業権に対する補償が含まれる。店舗の場合、移転先での再開業に必要な費用や逸失利益を計算して補償される
質問2.立ち退き交渉に応じてもらいやすい物件と交渉が難しい物件の違いは?
建物が老朽化していて安全上のリスクが高い場合、入居者は建て替えの必要性を理解しやすく、交渉はスムーズに進めやすいです。また、老朽化が進んでいる物件は、耐震性などの問題からも立ち退きの正当な理由として、裁判で認められる可能性が高くなります。
一方、入居者が高齢である場合、立ち退き交渉は困難です。こうしたケースでは、入居者が物理的または感情的な理由から移転を拒否するケースが少なくありません。
交渉が難航する場合、法的アドバイスを提供できる弁護士を通じて交渉をするのが効果的です。法的な背景や以前の判例をもとに交渉を進めるため、合理的な解決が期待できます。
質問3.立ち退き料の交渉のポイントは?
立ち退き交渉における重要なポイントは、以下のとおりです。
- 立ち退き理由の明確化
立ち退きの理由を入居者に明確に説明し、建て替えや耐震性の必要性などを伝える
- 適切な立ち退き期間の設定
法定通知期間を守りつつ、入居者が新居を探すための十分な時間を提供する
- 引っ越し先情報の提供と支援
同等またはそれ以上の条件の住居を提案する。さらに、引っ越し費用のサポートや引っ越し業者の手配を提案すれば、入居者の移転が支援できる
- 立ち退き料の合意と支払い条件の明確化
期日までに退去した場合に立ち退き料を支払うという条件を設定する。また、退去後に立ち退き料を支払う点を確約し、その内容を合意書に記載する
まとめ
本記事では、立ち退き料の概要や費用相場、支払いまでの流れ、立ち退き料を安く抑える方法について解説しました。
立ち退き料の相場は、家の種類や交渉、事情などによって異なりますが、賃貸住宅の場合は賃料の3〜6か月分、一軒家は10か月分、店舗やテナントは2〜3年が相場です。また、オフィスは移転による顧客喪失のリスクが低いため、家賃の1年分が相場で、店舗よりも低めに設定される場合がほとんどです。
一方で、分譲マンションの場合は、所有者が自己所有する部分に対して、売渡請求権が行使されるため、立ち退き料の支払いが発生しません。このような物件ごとの違いを正しく理解し、立ち退き料の交渉を行うようにしましょう。
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