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2024.01.20
【プロが教える】不動産の売却益は相殺可能?損益通算ができるケースや注意点を徹底解説!
不動産の売却益の相殺可否や損益通算について詳しく知りたいという方も多いのではないでしょうか。そこで、この記事では、不動産の売却益がプラス、マイナスの際に相殺できるケースや不動産売却の損益通算に必要な書類について解説します。
また、不動産の売却益を相殺する際の注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
不動産の売却益がプラスの際に相殺できるケースは3つ
不動産の売却益がプラスの際に相殺できるケースは3つあります。
- 他の不動産売却の譲渡損と相殺する
- 特定のマイホームの買換え等の特例で課税を繰延べする
- 特定の事業用資産の買換え等の特例で課税を繰延べする
それぞれについて詳しく解説します。
1.他の不動産売却の譲渡損と相殺する
不動産売却において、売却益(譲渡益)と売却損(譲渡損)の相殺を可能にするのが「損益通算」です。たとえば、ある年に2000万円で購入した土地を3000万円で売却した場合、1000万円の譲渡益が発生します。
通常は、この譲渡益には税金が課されますが、同年に他の不動産を売却し、500万円の譲渡損が出た場合、税金は1000万円の譲渡益から500万円の譲渡損を差し引いた500万円分のみに適用されます。
このように、同一年内の不動産売買における損益を相殺することで、税負担の軽減が可能です。
2.特定のマイホームの買換え等の特例で課税を繰延べする
「特定の居住用財産の買換えの特例」を活用すると、マイホームの売却益を新しい住宅の購入資金として活用可能です。たとえば、2000万円のマイホームを3000万円で売却し、1000万円の売却益が発生した場合、通常はその時点で課税されます。
しかし、この特例を活用すると、将来新居を売却した際へと課税のタイミングを延長できます。新居を4,000万円で購入し、将来6,000万円で売却したとすると、2,000万円の売却益に繰延べしていた1,000万円の売却益が加えられ、合計3,000万円に対して課税されるという仕組みです。
なお、この特例にはさまざまな用件があるため、注意してください。
3.特定の事業用資産の買換え等の特例で課税を繰延べする
この特例では、事業用資産の売却で得た利益の80%を新たに購入する事業用資産に対する支出と相殺し、税金の支払いを先延ばしにできます。ただし、この特例はあくまで課税のタイミングを延期するものです。
将来、資産を売却した際には、繰り延べられた売却益を含めた総額に対して税金が課されます。資産の買換えを検討する際には、長期的な財務計画の一環としてこの特例の活用を検討してください。
不動産の売却益がマイナスの際に相殺できるケースは3つ
次に、不動産の売却益がマイナスの際に相殺できるケースについても解説します。
- 他の不動産売却の譲渡益と相殺する
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
- マイホームを買換えた時の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.他の不動産売却の譲渡益と相殺する
不動産の売却でマイナスの売却益(譲渡損)が発生した場合、同年内の他の不動産売却でのプラスの売却益との相殺が可能です。たとえば、2,000万円の土地を1,000万円で売却し、1,000万円の売却益が出た場合が該当します。
また、同年に別の不動産を3,000万円で売却し2,000万円の譲渡益が得られた場合は、この譲渡益から1,000万円の譲渡損を差し引き、課税対象となる譲渡所得は1,000万円に減少します。このように、複数の不動産を取り扱う場合は、税金計算の仕組みを正しく理解し、適切な売却戦略を立案しなければなりません。
2.特定のマイホームの譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
不動産を売却し、その売却益がマイナスである場合、この損失は給与所得や事業所得と損益通算が可能です。もし売却による損失がその年に完全に相殺できない場合、残りの損失額は次の3年間で繰越控除して損益通算しても問題ありません。
たとえば、4,000万円で購入した自宅を2,000万円で売却し、住宅ローン残高が3,000万円だった場合を考えてみましょう。この場合、3,000万円のローン残高から2,000万円の売却価格を差し引いた1,000万円が損益通算と繰越控除の対象額です。
もし、その年の給与所得や事業所得が800万円であれば、その年の課税所得はゼロとなり、さらに200万円の損失は次年度に繰り越されます。翌年に900万円の給与所得がある場合、その年の課税所得は900万円から繰越損失200万円を差し引いた700万円になるという計算です。
3.マイホームを買換えた時の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
マイホームを新しい住居に買い換える際、売却による損失が発生した場合、給与所得や事業所得との損益通算が可能です。さらに、その年の控除でカバーしきれないマイナス分は、最大3年間繰越控除して損益通算できます。
たとえば、5,000万円のマイホームを4,000万円で売却し、新しい住居に買換えたと仮定します。売却により1,000万円の損失が発生し、その年の給与所得が800万円なら、課税所得はゼロとなり、200万円の損失が翌年へ繰り越されるわけです。
もし、翌年の給与所得が800万円だった場合、課税所得は600万円になります。このように、この特例を活用すれば、マイホームの売却に伴う税金の負担を軽減できます。
不動産売却の損益通算に必要な書類は4つ
次に、不動産売却の損益通算に必要な書類について解説します。
- 損益通算の計算書類
- 確定申告書
- 登記事項証明書
- 住宅ローン残高証明書
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.損益通算の計算書類
この書類は、売却に関する収支の詳細を明確にするために作成され、売買代金だけでなく、関連する諸費用や税金なども綿密に計算に含める必要があります。
これらの計算は複雑な場合が多く、個人での作成が難しい場合には、金融や税務の専門家に相談するのがおすすめです。正確な損益通算の計算書類の提出により、不動産売却における税務処理が適切に実施されます。
2.確定申告書
その年に得た収入と納めるべき税金の額が詳細に記載されているのが、確定申告書です。とくに不動産売却による利益や損失があった場合、これらの情報は適切に確定申告書に反映しなければなりません。
確定申告書はどのような場合でも必要となるため、不動産を売却する際には、この書類の準備からはじめましょう。損益通算を適切に実施し、正確に税金を申告するためには、確定申告書の正確な作成が不可欠です。
3.登記事項証明書
登記事項証明書は、不動産の所有者とその物件の詳細を証明する書類であり、不動産の査定や売却過程で不可欠です。しかし、この証明書は原本でなくても謄本で利用できるため、売却の際に取得したものをコピーして保管しておきましょう。
ただし、登記事項証明書には発行から3ヶ月の有効期限があるため、準備を早めにしていても、実際に使用するタイミングで期限切れになっている可能性があります。
4.住宅ローン残高証明書
この証明書は、マンションや戸建て住宅の購入に利用した住宅ローンの残高を証明し、不動産の価値を示す重要な証明書です。損益通算を適切に実施するには、特定の条件を満たす必要があり、これらの条件を満たさない場合、損益通算ができません。
昨今では、多くの金融機関がオンラインでローン残高の確認を可能にしていますが、書類としての提出が求められるケースもあるため、可能であれば印刷して保管するようにしてください。
不動産の売却益を相殺する際の注意点は5つ
次に、不動産の売却益を相殺する際の注意点について解説します。
- 不動産売却における損益通算は例外的な制度である
- 買換え特例と3,000万円控除の特例は併用できない
- 不動産の所有期間により税率が変わる
- 確定申告時に手続きが必要である
- 専門家に相談・依頼をする
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.不動産売却における損益通算は例外的な制度である
土地や建物の譲渡による所得は分離課税の対象であり、一般的な給与所得や事業所得などの総合課税所得との相殺、株式等の他の分離課税所得との通算は許されません。また、過去の損失を翌年以降に繰り越して利益と相殺することも原則として認められていません。
ただし、マイホームの売却や買換えの際の特例として、損益通算や繰越控除、課税の繰延べが許されるケースがあります。これらは例外的な制度であり、不動産売却における税務計画を立てる際には、これらの特例が適用されるかどうか注意しましょう。
2.買換え特例と3,000万円控除の特例は併用できない
マイホームを売却した際には、最大3,000万円の譲渡所得控除が利用可能な税制優遇があります。ただし、この控除を利用する場合、他の税制優遇は適用されません。そのため、買換え特例と3,000万円控除のどちらがより有利か検討することが重要です。
3,000万円控除は、譲渡所得税を繰り延べるのではなく、直接的に減税する効果があります。譲渡益が3,000万円以下の場合、この控除を利用するのがおすすめです。
一方、譲渡益が3,000万円を超える場合や、新たに購入する自宅を長期間保有する予定のある場合は、買換え特例の利用が有利になる可能性があります。
3.不動産の所有期間により税率が変わる
不動産を売却する際の譲渡税の税率は、所有期間が5年未満の場合と5年以上の場合で税率が約半分に変わります。
5年未満 |
5年以上 |
|
所得税 |
30% |
15% |
住民税 |
9% |
5% |
短期間での売却には高い税率が適用されるため、不動産売却による譲渡益を目指す際には、所有期間を考慮にいれる必要があります。不動産売却の際には、所有期間とその影響する税率を事前に把握し、計画的に売却しましょう。
4.確定申告時に手続きが必要である
不動産を売却した際、譲渡所得税の確定申告は必須です。とくにマイホームの売却や買い替えの場合、損益通算や繰り越し控除など特定の税制優遇を受けるためには、通常の確定申告書に加え、必要な明細書や計算書、その他の添付書類の提出が求められます。
提出すべき添付書類には、マイホームの登記事項証明書、売買契約書のコピー、借入金の残高証明書などが含まれます。希望する特例の種類によって必要な書類は異なるため、確定申告の前にしっかりと確認し、適切に準備するようにしてください。
5.専門家に相談・依頼をする
不動産売却に伴う損益通算や特例の適用には、専門的な税務知識が必要です。これには、特例の適用条件の検討や確定申告の手続きなど、複雑かつ時間を要する作業が伴います。これらの作業は個人でも可能ですが、不動産売却と並行して進めるには相当な労力と時間が必要です。
たとえば、マイホームの買換え特例と3,000万円控除の特例は同時に適用できません。どちらかを選ぶと、もう一方は利用できなくなります。さらに、税制は頻繁に改正されるため、特例の適用条件を誤ってしまうリスクもあります。
このような手間やリスクを避けたい場合は、税理士に相談するのがおすすめです。税理士報酬はかかりますが、確定申告の代行や的確な税務アドバイスを受けられる点が大きなメリットとなります。
不動産 売却益 相殺でよくある3つの質問
最後に、不動産 売却益 相殺でよくある質問について解説します。
- 質問1.不動産売却で損をしないポイントは?
- 質問2.不動産売却にかかる譲渡所得税の計算方法は?
- 質問3.3,000万円控除とは?
それぞれについて詳しくみていきましょう。
質問1.不動産売却で損をしないポイントは?
不動産売却で損をしないための重要なポイントは次のとおりです。
- 利用する不動産会社を精査する
不動産一括査定サイトを利用すれば、一度の査定依頼で複数の会社から査定が受けられるため、不動産会社の比較が容易となる
- 売却タイミングを見極める
インフレやデフレの影響を受けやすいため、高値での売却を目指すなら、市況を踏まえたタイミングの選定が重要になる
- 信頼できる担当者を選ぶ
信頼できる会社でも、担当者が信頼できない場合は望む結果に結びつかないケースがあるため、依頼前に担当者の信頼性を確認する必要がある
不動産売却で損をしないためには、これらのポイントを押さえておきましょう。
質問2.不動産売却にかかる譲渡所得税の計算方法は?
譲渡所得税は「譲渡所得金額 × 税率」で計算します。譲渡所得は、売却価額から取得費や必要経費を差し引いた金額です。
この譲渡所得に適用される税率は、不動産の所有期間によって変わります。所有期間が5年超の長期の場合、税率は20%(復興特別所得税を含む)です。一方、5年以下の短期所有の場合は30%(復興特別所得税を含む)の税率が適用されます。
これらの税率を譲渡所得に乗じることで、譲渡所得税の算出が可能です。なお、不動産売却にかかる税金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:不動産売却にかかる税金の計算方法|譲渡所得の控除制度や節税ポイントをわかりやすく解説!
質問3.3,000万円控除とは?
マイホーム売却時に適用される「3,000万円控除」は、譲渡所得税の大幅な軽減を可能にする制度です。一般的に譲渡所得税の税率は最大39.63%と高額ですが、この特別控除の活用により、売却による利益が3,000万円までなら税金がかからない可能性があります。
多くの家庭では、マイホーム売却時の譲渡所得が3,000万円を超えることは少ないため、実質的に税金が免除されるケースが多いです。なお、不動産売却における3,000万円控除については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:不動産売却における3,000万円控除とは?適用要件や必要書類について徹底解説!
まとめ
この記事では、不動産の売却益がプラス、マイナスの際に相殺できるケースや不動産売却の損益通算に必要な書類、売却益を相殺する際の注意点について解説しました。
不動産の売却益については、プラスかマイナスにかかわらず、相殺できる方法があります。しかし、書類の準備が煩雑であったり、法改正で適用条件が変更になったりするリスクが伴います。
そのため、不動産の売却を検討する場合は、専門家に相談するようにしてください。売却時の税率の違いも含めて、適切なアドバイスが期待できます。
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