2023.09.23

不動産売却の利益は年末調整が必要?流れや必要書類、計算方法、よくある質問をわかりやすく解説!

不動産売却の利益は年末調整が必要?流れや必要書類、計算方法、よくある質問をわかりやすく解説!

不動産を売却する際、「年末調整にどのような影響があるのか」や「確定申告は必要なのか」など、不安や疑問を抱えている方は少なくないでしょう。

実は、不動産での利益は給与所得とは異なり、年末調整の対象外です。そのため、会社の経理への特別な申請は必要ありません。ただし確定申告を税理士に依頼しない場合、自身で進める必要があります。

本記事では、不動産売却の流れや確定申告に必要な書類、譲渡所得の計算方法を詳しく解説していきます。不動産売却を予定している方は、ぜひ参考にしてみてください。

監修者

不動産売却の利益は年末調整が必要?

不動産売却の利益は年末調整が必要?

不動産売却の利益は、譲渡所得として取り扱われます。年末調整の対象は給与所得だけですので、譲渡所得は年末調整には含まれません。

したがって、不動産の売却による利益(譲渡所得)についての年末調整は必要ありません。しかし譲渡所得がある場合は、翌年の3月15日までに自ら確定申告を行う必要があります。

損益関係なく確定申告は必要になる

不動産を売却した際、利益が発生するケースだけでなく、損失が出た場合も確定申告は必要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

売却益があった場合は「譲渡所得」

不動産を売却して利益が生じた場合、その利益は「譲渡所得」として確定申告が求められ、所定の税金を納付する必要があります。不動産の売却益に関連する税金は、他の通常の所得、例えば給与所得などとは独立して算出(分離課税)します。

なお、売却した不動産の所有期間が売却時の1月1日を基準として5年以上の所有の場合、異なる税率が適用されます。

譲渡損失が出た場合は「損益通算」

不動産の売却で譲渡損失が発生した場合、その損失を他の所得から差し引く「損益通算」の手続きを確定申告で行うことが可能です。この措置を利用することで、特定の条件下で税金の負担を軽減する特別控除を享受することができます。

もし、一度の申告で完全に控除することができなかった場合、その損失を譲渡の翌年から3年間にわたって繰り越し控除することも認められています。

なお「損益通算」とは、赤字となる所得を他の黒字となる所得から控除する制度を指します。この通算が許される所得は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4種類に限られています。全ての所得にこの通算を適用することはできませんので注意が必要です。

確定申告が不要な場合とは?

不動産の売却において、売却代金からの取得費や諸経費の控除後に「売却益」が発生しない際、法律上は確定申告の義務は免除されます。

しかし確定申告を行わないと、例えば譲渡損失のような特例を活用して税金の還付や減税を受けることはできません。そのため、不動産を売却した際は、結果如何にかかわらず翌年の確定申告を行うことをおすすめします。

確定申告の流れと必要書類

確定申告の流れと必要書類

不動産売却の際の確定申告の手続きは、次のステップで行います。

  1. 課税譲渡所得の計算と所得税の算出
  2. 必要書類の整備
  3. 確定申告書の作成
  4. 税務署への提出

確定申告は、毎年2月16日~3月15日までに管轄の税務署まで必要書類を提出する必要があります。

売却益が得られる場合、3種類の税金(所得税、住民税、復興特別所得税)が適用され、住民税を除く2つの税金を確定申告時に納付します。住民税の請求書は5月頃に到着し、その税金は6月、8月、10月、翌年1月の4回に分けて支払いとなります。

以下は確定申告に必要な書類の一覧です。

  • 譲渡所得の内訳書(税務署で提供)
  • 確定申告書B様式(譲渡所得がある場合に適用、税務署で提供)
  • 確定申告書第三表(分離課税用、税務署で提供)
  • 売買契約書のコピー(自分で準備)
  • 譲渡費用の領収書コピー(自分で準備)
  • 取得時の売買契約書のコピー(自分で準備)
  • 取得費用の領収書コピー(自分で準備)
  • 譲渡した土地の全部事項証明書(法務局で取得)
  • 源泉徴収票、マイナンバーカードなどのその他必要書類(自分で準備)

確定申告の際は、これらの書類を整え、指定された期間内に税務署へ提出しましょう。

年末調整と確定申告の時期

年末調整と確定申告の時期

年末調整と確定申告は、それぞれ異なる時期に行われるため、準備や手続きのタイミングに注意が必要です。不動産売却にあたり、それぞれの違いを理解しておきましょう。

【年末調整の時期】

年末調整の法的期限は1月31日になります。企業や組織によっては、記入漏れや誤りを防ぐために11月後半~12月初めにかけて案内や呼びかけを開始することが一般的です。

もしミスが生じた場合、年末調整の書類を再提出しなければなりませんので、保険料など自身で保管している必要書類は事前に確認しておくと安心です。

【確定申告の時期】

確定申告は、通常2月16日~3月15日の期間に行われます。この期間中に申告と納税を完了させましょう。

なお上記の期間は、所得税に関するものです。贈与税や個人事業主の消費税などは期間が異なるため、該当者は別途確認が必要になります。

また、確定申告の締め切り近くになると税務署は大変混雑します。書類の不備なく提出できるかは保証されないので、早めの手続きがおすすめです。近年では、インターネットから確定申告できるe-taxを利用して手続きする方法もあります。

以下の記事では、不動産売却の最適なタイミングを判断するために、季節や築年数、ライフスタイルなどさまざまな観点から、売却時期やタイミングを解説しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。

関連記事:不動産売却のタイミングはいつが良い?高く売るための判断基準やコツを詳しく解説

不動産所得における計算方法

不動産所得における計算方法

不動産の譲渡所得の算出は、以下の式を用います。

譲渡所得 = 総収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額

不動産に関する譲渡所得、例えば土地や建物の場合、分離課税方式が適用されます。詳しく見ていきましょう。

長期譲渡所得・短期譲渡所得

不動産の譲渡所得は、所有期間に応じて「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分かれて税率が異なります。具体的には以下の通りです。

 

所得税

住民税

売却した年の1月1日時点での不動産の所有期間が5年超え(長期譲渡所得)

15%

5%

売却した年の1月1日時点での不動産の所有期間が5年以下(短期譲渡所得)

30%

9%

なお、復興特別所得税は2037年までの期間限定で課される税金で、所得税に対して2.1%が加算されます。

取得費

取得費とは、不動産や資産を購入する際の総額で、購入代金のみならず関連する費用も含まれます。もし取得費が不明だったり、売却価格の5%を下回ったりする場合、売却価格の5%を取得費として考えることが可能です。

取得費の計算において考慮する内容は以下の通りです。

  • 不動産本体の購入代金
  • 仲介手数料
  • 登録免許税や不動産取得税等の関連税金
  • 収入印紙代
  • 固定資産税の精算金
  • 造成や測量に関わる費用
  • 立退料
  • 訴訟に関する費用
  • 建物の購入や解体に必要な費用
  • 違約金

譲渡費用

譲渡費用とは、資産の譲渡に直接関連する費用の総額を指します。以下、譲渡費用に関わる項目です。

  • 仲介手数料
  • 収入印紙代
  • 測量に関する費用
  • 建物の解体にかかる費用
  • 立退きに関わる料金
  • 違約金
  • 広告の費用

一方で、以下の項目は譲渡費用としては認められませんので注意しましょう。

  • 抵当権の抹消に関する費用
  • 修繕や清掃にかかる代金
  • 税理士への報酬
  • 引越しの際の費用
  • 固定資産税

特別控除額

特別控除額は、税制上のメリットを享受するための一つの手段として提供されています。特別控除にはさまざまな種類がありますが、その中でも最もよく知られているのは自宅売却に関する控除です。

具体的には、自宅を売却した場合、最大で3,000万円までの特別控除を受けることができます。これは、税金の計算時に譲渡所得から差し引くことができる額であり、売却による税負担を軽減することが期待されます。

特別控除は、多くの家計にとって非常に大きなメリットとなるため、不動産の売却を検討する際には、この特別控除の適用条件や方法をしっかりと理解しておくことが重要です。適用条件は一定の要件を満たす必要がありますので、詳細は税務署や税理士に確認するとよいでしょう。

不動産売却の年末調整でよくある5つの質問

不動産売却の年末調整でよくある5つの質問

不動産売却の年末調整でよくある質問は次の通りです。

  • 質問①不動産売却で確定申告をしないペナルティがある?
  • 質問②年末調整と確定申告の違いは?
  • 質問③ 配偶者が不動産売却したら年末調整はどうなる?
  • 質問④年末調整と確定申告をする際のポイントは?
  • 質問⑤年末調整を忘れた場合はどうなる?

それぞれ詳しく解説します。

質問①不動産売却で確定申告をしないペナルティがある?

不動産を売却した際に譲渡益が生じた場合、その利益に対する確定申告が必要です。この申告を怠ると「無申告加算税」というペナルティが適用されるリスクがあります。

無申告加算税は、支払うべき税金に基づいて計算されます。税額が50万円までの場合は、15%の加算税が発生し、50万円を超える部分については、その超過分に20%が適用されます。本来支払うべき税金の上に加算される追加の税金となるため、確定申告を適切に行うことが重要です。

質問②年末調整と確定申告の違いは?

年末調整と確定申告は、どちらも税に関連した手続きですが、その目的や対象者が異なります。

確定申告は、所得税の申告手続きのことを指し、個人が1年間(1月1日から12月31日)に得た所得全体に対して行います。所得の種類には給与所得、事業所得、不動産所得などがあり、確定申告の期限は翌年の2月16日から3月15日までと定められています。

一方の年末調整は、会社が従業員の給与から適切な所得税を徴収するための手続きです。この調整は給与所得者のみを対象とし、その年の所得や控除に応じて行われます。

給与所得のみを持つ人は年末調整だけで税務処理が完了し、確定申告の手続きは不要です。しかし、給与所得以外の所得を持つ人や自営業者は確定申告が必要になります。

質問③ 配偶者が不動産売却したら年末調整はどうなる?

不動産を売却した場合、配偶者名義での年末調整や確定申告が必須です。売却による益の有無に関わらず、取引の事実がある場合は手続きを行います。

条件次第では、配偶者控除が受けられなくなる場合があるので注意が必要です。「扶養の範囲から外れる」とも表現されるこの状態は、一定の所得以上がある場合に適用され、それにより税金や健康保険の保険料が増加する可能性があります。

一方、売却で益が出ていない場合、配偶者控除は継続して受けられ、扶養の範囲から外れるリスクは発生しません。

質問④年末調整と確定申告をする際のポイントは?

年末調整と確定申告をする際のポイントを簡潔に解説します。重要項目を押さえて、ミスなく手続きを行いましょう。

① 譲渡所得の確定申告

  • 不動産売却で利益が出た場合は、確定申告が必須
  • 譲渡所得税は、他の所得とは別計算(分離課税)
  • 売却物件の所有期間により、税率が変動

② 利益が出ない場合の申告

  • 利益が出なくても確定申告が可能
  • 「損益通算」で損失分を他所得から控除
  • 特例利用には条件が存在(例:売却物件が住居用、5年以上の所有など)

③ 確定申告の遅れ

  • 申告が遅れると、税務署から催促の手紙が届く
  • 投資目的の物件売買者は特に注意が必要

④ 確定申告の免除条件

  • 売却益がない場合、法律上の申告義務はない
  • ただし還付や税金減額のメリットを享受するため、売却後は基本的に確定申告を推奨

質問⑤年末調整を忘れた場合はどうなる?

年末調整を適切に行わなかった場合、次のような問題が生じる可能性があります。

  • 還付が受けられる税金の過払いが生じ、従業員は還付を得られなくなる
  • 住民税の納税額が適正よりも多くなるリスクがある
  • 本来適用される控除を受ける機会を失う
  • 確定申告の手続きが必要となる場面が増える

年末調整を忘れた場合のリスクを理解し、期日内に正しく申請しましょう。

まとめ

まとめ

不動産を売却した際、年末調整には影響しませんが、確定申告は必要となります。確定申告に関して「利益が出なければ行わなくても良い」との認識が一部にありますが、売却した際の損益を問わず行うことが基本です。

特に売却による利益が発生した場合、該当する譲渡所得税や住民税が課されます。売却した翌年の3月15日までの期間内に確定申告を忘れないようにしましょう。

もし、購入時の契約書などが不明な場合、納税額が多くなるリスクがあるので注意が必要です。なお、税法には譲渡所得から差し引ける特別控除や、損失発生時の損益通算、繰越控除の特例がありますので、これらも適切に活用してください。

事前に確定申告の手順や準備をしっかりと理解し、スムーズに手続きを進めましょう。もし確定申告の手続きや税金計算に不安がある場合、税理士や専門家に相談することをおすすめします。

なお「ビリーフ株式会社」は不動産の買取・仲介だけではなく、不動産に関するさまざまなご相談を承っております。

不動産の購入時や売却時のわかりにくい諸費用や流れについても丁寧にご説明させていただきますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。公式LINEアカウントによる不動産のお悩み相談はこちらから

監修者

トップへ戻る
LINE相談 ご来店予約