2025.12.16

【遺族必見】特殊清掃の費用は誰が払う?負担減の3つの方法

【遺族必見】特殊清掃の費用は誰が払う?負担減の3つの方法

特殊清掃の費用は誰が払うのかというと、基本的には連帯保証人や相続人が負担します。故人が賃貸物件に住んでいた場合、原状回復義務が発生するため、誰かが必ず費用を支払わなければなりません。

突然の訃報に加え、高額な請求に直面して「自分が払うべきなのか」と疑問を感じて、不安になるのも無理はありません。しかし、法的な優先順位や対処法を正しく理解していれば、不当な支払いを回避したり、負担を大幅に軽減したりできる可能性があります。費用の負担を回避や軽減する対処法としては、以下のとおりです。

  • 対処法①保険の加入状況を確認して、適用する
  • 対処法②支払い義務をなくすために、相続放棄を行う
  • 対処法③複数の専門業者で、相見積もりを取る

この記事では、法的な支払い義務が発生するケース、費用の負担を回避または軽減する対処法、特殊清掃にかかる費用の内訳を網羅的に解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

監修者

法的な支払い義務が発生する3つのケース

法的な支払い義務が発生する3つのケース

孤独死や自殺などが起きた現場では、原状回復のために特殊清掃が必要です。この費用負担は、契約内容や法律に基づいて厳格に決められています。ここでは、誰がどのような理由で支払う義務を負うのか、代表的なケースについて解説します。

ケース①契約上の義務が重い連帯保証人

賃貸借契約において、連帯保証人は入居者(借主)と同等の責任を負います。入居者が亡くなり家賃や原状回復費用が払えない場合、連帯保証人がすべての債務を肩代わりしなければなりません。

民法においても、連帯保証人の責任は非常に重く規定されており、支払い能力の有無にかかわらず、請求があれば拒否するのは困難といえます。たとえ親族でなくても、契約書に捺印している以上、法的な支払い義務からは逃れられません。

ケース②故人の財産を引き継ぐ法定相続人

連帯保証人がいない場合、あるいは連帯保証人が支払えない場合は、法定相続人(配偶者や子ども、親、兄弟姉妹など)に支払い義務が発生します。相続とは、預貯金などのプラスの財産だけを引き継ぐものではありません。

借金や未払いの家賃、特殊清掃費用といった「マイナスの財産」も対象となります。民法第896条にもとづき、相続人は被相続人(亡くなった方)の権利義務を承継するため、原則として清掃費用を支払う責任を負います。

参考:民法第896条|WIKIBOOKS

ケース③例外的に負担する不動産オーナー

連帯保証人もおらず、相続人全員が相続放棄をした場合、最終的に費用の請求先がなくなります。この場合、泣き寝入りに近い形ですが、不動産オーナー(大家)が費用を負担せざるを得ません。

オーナーにとっては大きな損失ですが、次の入居者を募集するためには、自費で特殊清掃を行い、部屋をきれいにする必要があります。しかし、これはあくまで最終的な手段であり、基本的には連帯保証人や相続人への請求が優先されます。

費用の負担を回避または軽減する3つの対処法

費用の負担を回避または軽減する3つの対処法

特殊清掃の費用は数十万円から、場合によっては100万円を超える場合もあり、経済的なダメージは計り知れません。しかし、適切な知識を持って行動すれば、負担をゼロにしたり、大幅に減らしたりできます。ここでは、具体的な対処法を解説していきます。

対処法①保険の加入状況を確認し適用する

まず最初に行うべきは、故人が加入していた「火災保険」や「少額短期保険」の確認です。最近の賃貸向け保険には、孤独死対応の「特約」が付帯しているケースが増えています。

この特約により、原状回復費用や遺品整理費用が補償されるケースも少なくありません。証券が見当たらない場合は、管理会社や不動産会社に問い合わせて契約内容を確認してください。

また、家主側が「孤独死保険(家主費用・利益保険)」に加入している場合もあり、保険金で賄えるならば、遺族への請求額の減額も期待できます。

対処法②支払い義務をなくすために相続放棄を行う

故人に資産がなく、特殊清掃費用やそのほかの借金だけが残る場合は、「相続放棄」を検討しましょう。相続放棄を家庭裁判所に申し立てて受理されれば、最初から相続人ではなかったとみなされます。

これにより、特殊清掃費用を含むすべての負債の支払い義務から解放される点がメリットです。しかし、相続放棄は「相続の開始を知った時から3か月以内」に手続きを行わなければなりません。

注意点として、遺品整理などを勝手に行うと「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあるため、専門家への相談が不可欠です。

参考:相続の放棄の申述|裁判所

なお、相続放棄の場合の遺品整理については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:相続放棄の場合の遺品整理は要注意!3つのNG事例

対処法③複数の専門業者で相見積もりを取る

支払いが避けられない場合でも、業者の選び方1つで費用は大きく変わります。特殊清掃の料金設定は業者によって異なり、足元を見て不当に高額な請求をする悪徳業者も存在します。

このため、必ず3社以上の業者から見積もりを取り、作業内容と料金を比較しましょう。「なぜこの金額になるのか」を明確に説明できる業者を選ぶようにしてください。

安さだけで選ぶと、においが取り切れずに再施工となり、結果的に高くつくこともあるため、実績と信頼性も加味して選定する必要があります。

特殊清掃にかかる費用の3つの内訳

特殊清掃にかかる費用の3つの内訳

なぜ特殊清掃の費用が高額になるのでしょうか。一般的なハウスクリーニングとは異なり、感染症のリスク対応や専門的な消臭技術が必要だからです。ここでは、見積もりを見る際に知っておくべき費用の内訳と、料金が変動する要因について解説していきましょう。

内訳①体液や汚染物を除去する清掃作業費

特殊清掃の核となる部分が、床や壁に染み付いた血液や体液の除去作業です。感染症予防のために防護服を着用して、専用の薬剤を使用するため、人件費と技術料が高くなります。

発見が遅れて遺体の腐敗が進んでいる場合、床下の基礎部分まで解体・洗浄が必要になるケースもあり、作業範囲が広がれば広がるほど費用は高騰しかねません。一般的な相場としては、軽度な場合で5万円〜、重度な場合では床の解体などを含めて50万円以上かかるケースも珍しくありません。

内訳②完全消臭のためのオゾン脱臭機使用料

孤独死の現場特有の「死臭」は、市販の消臭剤では消えません。プロの業者は、高濃度のオゾン脱臭機を使用して、壁紙や建材の内部に染み込んだにおいの元を分解します。

このオゾン脱臭機の稼働日数や台数によって費用が変動します。においが強烈な場合は、数日間稼働させ続ける必要があり、その分コストがかさみます。オゾン脱臭は特殊な機材を使用するため、1日あたり30,000円~150,000円の費用が設定されている場合が一般的です。

内訳③残置物の撤去と廃棄処分費用

部屋に残された家財道具(遺品)の処分費用も大きなウェイトを占めます。汚染された布団や畳は、通常のゴミとして出せず、適切な処理が必要な産業廃棄物として扱われるケースがあります。

また、ゴミ屋敷状態であった場合は、処分する量に比例して費用が跳ね上がる可能性も高いです。遺品整理と特殊清掃をセットで依頼すれば、トータルの費用を抑えられる場合もあります。処分費用の相場は、1Kやワンルームの部屋でも、荷物の量によっては10万円〜30万円程度かかる場合が一般的です。

なお、特殊清掃の費用相場については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:特殊清掃の費用相場はいくら?料金相場と安く抑える3つの方法をご紹介!

特殊清掃の費用を誰が払うかについてよくある3つの質問

特殊清掃の費用を誰が払うかについてよくある3つの質問

ここでは、特殊清掃の費用を誰が払うかについてよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。

質問①自分で清掃して費用を浮かすことはできますか?

結論から言うと、自分での清掃は絶対に避けるべきです。感染症の危険が高く、凄惨な現場は生涯残るトラウマになりかねません。

また、市販の薬剤では強烈な死臭や床下の体液を完全には除去できず、後日悪臭が再発してしまいます。結果として、原状回復不足によりさらに高額な損害賠償を請求されるリスクが高まるため、安易に手を出さず、必ず専門技術を持つプロに依頼してください。

質問②孤独死があった場合、損害賠償も請求されますか?

請求される可能性が十分にあります。発見が遅れて建物に損害を与えた場合の原状回復費用に加え、次の入居者が決まりにくくなる場合による家賃収入の減少分(心理的瑕疵)として、損害賠償を請求されるケースが一般的です。

これらは、借主の債務として扱われるため、連帯保証人はもちろん、相続放棄をしていない相続人も支払う義務を負います。長期間放置された場合は、請求額が高額になるため、専門家への相談が不可欠です。

なお、事故物件については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:【プロが教える】事故物件とは?契約で後悔しないための3つの注意点をご紹介!

質問③見積もりが追加で高くなることはありますか?

優良な業者であれば、原則として見積もり確定後の追加請求はありません。しかし、作業中に床材を剥がした結果、汚染が基礎やコンクリートの深部まで達している場合が判明する稀なケースはあります。

その際は、追加の解体や消臭作業が必要になる可能性があります。トラブルを防ぐため、契約時に「追加料金が発生する具体的な条件」を確認して、見積書に「追加請求なし」の記載があるかチェックしましょう。

正しい支払い義務を知って特殊清掃の負担を乗り越えよう!

正しい支払い義務を知って特殊清掃の負担を乗り越えよう!

特殊清掃の費用は、状況や立場によって支払うべき人が異なります。突然の出来事に動揺してしまうのは当然ですが、法的なルールを理解して、適切な手順を踏めば、不当な負担を避けられます。

まずは、落ち着いて状況を整理して、自分だけで抱え込まずに専門家や業者に相談するのが、解決への第一歩です。費用の負担を回避または軽減する対処法としては、以下があげられます。

  • 対処法①保険の加入状況を確認して、適用する
  • 対処法②支払い義務をなくすために、相続放棄を行う
  • 対処法③複数の専門業者で、相見積もりを取る

早期の行動こそが、精神的かつ金銭的な負担を最小限に抑え、あなた自身を守る鍵となります。1日も早く平穏な日常を取り戻すために、まずは信頼できる業者や専門家へ問い合わせることからはじめてみてください。

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