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2024.06.14
土地の分筆登記とは?メリット・デメリットや分筆登記の流れを詳しく解説します!
「分筆」とは、1つの土地を複数の区画へ分割することを指します。分筆登記する際は、土地家屋調査士への依頼が一般的ですが、注意点や必要書類、手続きの流れを理解しておくことが大切です。
本記事では、土地の分筆登記の概要やメリット・デメリット、分筆登記の流れについて解説します。また、分筆登記する際の注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
土地の分筆登記とは?
「分筆」とは、1つの土地を複数の区画へ分割する意味があり、それぞれの新しい区画には新しい地番が付与されます。この手続きは、土地家屋調査士という国家資格を持つ専門家に依頼するのが一般的です。
一方、「合筆」という手続きもあり、複数の土地を1つにまとめることを意味します。どちらの手続きも、登記上の変更を伴うため、法務局での正式な手続きが必要です。
分筆や合筆をすると、土地の利用方法や所有形態を柔軟に変更できるため、資産管理や相続対策において重要な手段となります。
土地を分筆登記するメリットは3つ
次は、土地を分筆登記するメリットについて解説します。
- 相続後の活用トラブルを回避できる
- 税金が安くなる可能性がある
- 地目変更によって新しい土地活用ができる
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.相続後の活用トラブルを回避できる
複数の相続人がいる場合、各人の意向が異なると活用計画に影響をおよぼします。分筆登記すれば、土地のそれぞれを個別に管理し、相続人それぞれのニーズに応じた活用が可能です。
たとえば、土地を売却して利益を得たい人や、新たな住居を建設したい人もいるかもしれません。そのため、分筆登記によって、土地の所有権を明確にし、将来的なトラブルを未然に防ぐ工夫が必要です。
2.税金が安くなる可能性がある
土地の評価額は、さまざまな要因によって決定され、評価額によって課税額が変わります。評価額に大きな影響があるのは、道路との接触状況や土地の形状です。
主要道路に面している土地は評価額が高くなる傾向がありますが、土地を分筆して主要道路に面さない部分を作ると、評価額を下げられます。評価額が低くなると、固定資産税や相続税、贈与税などの税額も低くなります。
3.地目変更によって新しい土地活用ができる
地目とは土地の用途を示し、「宅地」や「山林」、「田」などがありますが、一筆の土地では混在できません。しかし、分筆により個々の土地ごとに最適な地目への変更が可能です。
たとえば、「田」を「宅地」へ変更すると、住宅や商業施設など新しい建物の建築が行えるようになります。これにより、土地の潜在的な価値を引き出し、より効率的な活用が期待できます。
土地を分筆登記するデメリットは3つ
次は、土地を分筆登記するデメリットについて解説します。
- 土地の活用方法が難しくなる
- 固定資産税の特例措置が適用できなくなる
- 時間や手間がかかる
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.土地の活用方法が難しくなる
土地を2つに分けると、それぞれの敷地面積が小さくなり、建物の規模や配置が制限されます。このため、土地の分筆を検討する際には、現在の法律や規制を理解し、将来の利用目的に合った計画が欠かせません。
また、接道義務のために形状が不利になったり、建築可能な面積が減少したりする可能性もあるため、専門家のアドバイスを受けるのが賢明です。分筆は単なる土地の分け方ではなく、将来の生活や資産活用に直結する重要な決定であるため、慎重に進めるようにしましょう。
2.固定資産税の特例措置が適用できなくなる
住宅用地に対する特例措置が適用され、固定資産税が軽減する場合があります。しかし、土地を分割すると、住宅用地としての要件を満たさなくなり、固定資産税が増加する可能性があります。
小規模住宅用地の特例が適用されなくなると、税額が大幅に増加しかねません。分割の計画を立てる際には、税金への影響を十分に検討し、専門家のアドバイスを受けるのが望ましいです。
3.時間や手間がかかる
法務局や市役所との連絡、地図測量、現地調査と立会、境界確定測量、登記書類の作成と申請などが必要です。この手続きの煩雑さから、通常は土地家屋調査士に依頼しますが、適任の調査士を見つけるのが難しい場合もあります。
さらに、隣接する土地の境界の状況によっては、分筆にかかる期間が10日から最長で2~3か月におよぶ場合もあります。
土地の分筆登記に必要な書類
土地の分筆登記に必要な書類は、以下のとおりです。
書類名 |
概要 |
登記申請書 |
・申請者の住所 ・氏名 ・申請年月日 ・登記の目的 ・登録免許税額などの記載 |
地積測量図 |
測量ソフトで作成する。 用紙の強度やサイズ、文字の大きさ、太さまで法令で定められている |
境界確定資料 |
隣地所有者の筆界確認書など |
地形図 |
土地家屋調査士が申請の際に添付するもので、公図(法務局が公開する地図)に分筆された境界線を入れた書類 |
委任状 |
※本人が申請する場合は不要 |
土地の分筆登記の流れ
次は、土地の分筆登記の流れについて解説します。
- 土地家屋調査士への相談
- 土地家屋調査士の情報収集
- 境界確定測量と筆界確認書の作成
- 分筆案の作成と境界標の設置
- 登記申請
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.土地家屋調査士への相談
土地家屋調査士を複数選び、それぞれの見積もりや対応を比較し、自分の要望に適した専門家と契約することが大切です。面談時には、土地の面積や形状を示した地積測量図、境界線が明記された境界確認書などの資料を提出すると、より精度の高い見積もりと具体的な計画が可能になります。
土地家屋調査士への相談により、分筆登記のプロセスがスムーズに進み、土地を効率的に活用できるようになります。
2.土地家屋調査士の情報収集
土地の分筆登記には、正確な情報収集が欠かせません。依頼者が登記情報や地積測量図などの必要な資料を持っていない場合、土地家屋調査士が法務局や役所で公的資料を確認・収集します。
この作業は依頼者の同行を必要とせず、調査士が独自に行うことが可能です。契約を結んだ後、調査士は土地の歴史的な情報や現状の確認を行い、分筆予定の土地に関する詳細なデータを収集します。
これにより、分筆後の土地の境界や地積を正確に確定し、スムーズな登記手続きを進めるための基盤が整います。
3.境界確定測量と筆界確認書の作成
土地家屋調査士が現地を確認し、必要に応じて隣地所有者の協力を得ながら境界確定測量をします。調査士は境界標の有無を確認し、境界標がない場合は新たに設置しなければなりません。
その後、現況測量図を作成し、依頼者とともに土地の利用計画を立てます。新築や土地の一部売却を希望する場合は、現況測量図をもとに建築士や不動産業者と相談しなければなりません。
既存の境界標が揃っている場合、手続きは迅速かつ低コストで済みます。しかし、境界が不明確な場合は、隣接地の所有者と合意を得る必要があり、時間と費用がかかります。
4.分筆案の作成と境界標の設置
土地の分筆登記をする際には、関係者が集まって土地の分割方法について話し合います。この際、土地の活用目的に適した分け方を見極めるため、建築士や不動産業者、税理士などの専門家への相談が有効です。
具体的な分筆計画が決まった後、土地家屋調査士に計画を伝え、分筆案を作成してもらいます。そのうえで、土地家屋調査士は新しく設定される境界点に境界標を設置し、境界の確定作業を実施します。
5.登記申請
土地の境界線や区画が確定した後、土地家屋調査士は地積測量図を作成し、法務局に分筆登記を申請します。この手続きは、土地の所有者が変更なしの場合、土地家屋調査士の専門範囲内で完結します。
しかし、相続や贈与などにより分筆後の土地の所有者が変わる場合、司法書士の関与が不可欠です。司法書士は、新しい所有者名義への変更手続きをする役割があり、登記記録を適切に更新します。
土地を分筆登記する際の注意点は3つ
次は、土地を分筆登記する際の注意点について解説します。
- 2筆以上の土地をまとめて売却できない
- 接道義務などの建築基準法を守らなければならない
- 地域の条例を守らなければならない
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.2筆以上の土地をまとめて売却できない
個人が一度に2筆以上の土地を売却しようとする場合、事業性があるとみなされます。このような場合、宅地建物取引業法に基づき、認可を受けた業者でなければ違反になる可能性があります。
また、売却後一定期間を経過すると問題がなくなる場合もありますが、法的な解釈が変わる可能性もあるため、専門家の意見を聞きましょう。
なお、不動産売却の相談については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【プロが教える】不動産売却の悩みはどこに相談すればいい?内容別に専門家を詳しく解説! | ビリーフ株式会社
2.接道義務などの建築基準法を守らなければならない
都市計画区域内での土地分筆では、分割後の土地が幅4m以上の道路に最低2m以上接していなければなりません。この「接道義務」を怠ると、建物を建てられない土地となり、市場価値が低い土地になってしまう可能性があります。
売却や建築、賃貸アパートの建設など、目的に応じて適切な分筆計画を立てるためには、土地家屋調査士や建築士など専門家への相談がおすすめです。
3.地域の条例を守らなければならない
建築基準法よりも厳しい接道義務や、建物を建てられる最小面積が自治体の条例で規定されている場合があります。これらの条例は、都市の景観維持や火災時の安全対策を目的として設けられています。
そのため、違反すると建築許可が下りないだけでなく、後に売却や建築計画に支障をきたしかねません。分筆する際には地域の条例に詳しい土地家屋調査士に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
土地の分筆でよくある3つの質問
最後に、土地の分筆でよくある質問について解説します。
- 質問1.土地の分筆登記は自分でできる?
- 質問2.分筆にかかる費用はいくら?
- 質問3.土地を分筆できないケースとは?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.土地の分筆登記は自分でできる?
土地の分筆登記を自分で手続きするのは法的に可能ですが、手続きはかなり複雑です。土地の境界が未確定の場合は、境界確定測量をして、その結果をもとに地積測量図の作成が必要となります。
地積測量図には、専用の測量ソフトが使われるのが一般的ですが、技術的な作業は専門的な知識を要するため、土地家屋調査士の協力が推奨されます。また、分筆により土地所有者が変わる場合には、正しい権利登記をするために司法書士への相談も欠かせません。
質問2.分筆にかかる費用はいくら?
分筆にかかる費用は、登録免許税と土地家屋調査士への報酬から成り立っています。まず、法務局に支払う登録免許税は、分割する土地の筆数に応じて1筆につき1,000円が必要です。
一方、土地家屋調査士への報酬は、依頼内容により大きく異なります。境界がすでに確定している場合は、通常約10万円からの報酬が見込まれます。
しかし、境界が未確定の場合は、30万円~80万円程度が相場となるケースが多いです。これらの費用は、分筆の複雑さや土地の状況によって変動するため、事前に見積もりを取るのがおすすめです。
質問3.土地を分筆できないケースとは?
土地の分筆ができないケースは、以下のような状況があります。
- 条例などで分筆が規制されている
地域によっては、景観保護などの理由から分筆が制限されている。分筆を検討している場合は、地域の条例や法令を確認し、規制の内容を把握しておく必要がある
- 隣地との境界が確定していない
境界線が明確でない土地では、隣地所有者との協力を得て筆界確認書を作成し、法務局に提出する手続きが必要となる
- 分筆後に最低面積の規定未満になる
分筆後の土地が、建築基準法や地域の条例で定められた最低面積を下回ると、分筆が認められない。分筆計画を立てる際には、登記簿上の面積規定だけでなく、建築に関する規制も考慮し、適切な面積を維持するような計画が求められる
まとめ
本記事では、土地の分筆登記の概要や注意点、メリット・デメリット、分筆登記の流れ、について解説しました。
分筆登記すると、相続後のトラブルを回避できたり、税金が安くなったりする可能性があります。また、それぞれの土地で地目変更できるメリットがあります。
一方、敷地面積の減少によって活用方法が難しくなったり、小規模住宅用地の特例が適用されずに税金が増加したりする可能性もゼロではありません。さらに、分筆登記の手続きは手間がかかり、知識も必要です。
もし、分筆登記を検討している場合は、土地家屋調査士や司法書士への相談がおすすめです。なお「ビリーフ株式会社」は不動産の買取・仲介だけではなく、不動産に関するさまざまなご相談を承っております。
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