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2024.10.28
根抵当権とは?メリット・デメリットや民法で定められたルールを詳しく解説します!
根抵当権は、通常の抵当権とは異なり、設定された限度額の範囲内で複数回の借り入れと返済が可能な仕組みです。通常の抵当権に比べて手続きが簡素化され、何度も利用できるため利便性がありますが、民法のルールを理解しておく必要があります。
本記事では、根抵当権の概要やメリット・デメリット、民法で定められたルールをご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
根抵当権とは?
根抵当権は、通常の抵当権とは異なり、設定された限度額の範囲内で複数回の借り入れと返済が可能な仕組みです。この特徴から、経営者や企業が事業資金の調達に利用するケースが多く見られます。
また、個人向けにはリバースモーゲージ契約での利用が一般的で、シニア世代が自宅を担保に生活資金を調達する際に根抵当権が設定される場合が多いです。通常の抵当権に比べて手続きが簡素化され、何度も利用できるため利便性があります。
根抵当権と抵当権の違い
抵当権は、住宅ローンなどの融資を受ける際に不動産に設定される権利で、返済が滞ると金融機関が不動産を差し押さえ、競売にかけられる権利です。抵当権は特定の債権に対して設定され、元本を完済すれば消滅しますが、抹消手続きが必要です。
これに対して、根抵当権は繰り返し利用できる特徴があり、設定した上限額内であれば何度でも借り入れができます。根抵当権の抹消には、債権者の同意が必要となる点も異なります。
根抵当権のメリット・デメリット
次は、根抵当権のメリット・デメリットについて解説します。
- メリット
- デメリット
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
メリット
根抵当権は、企業や経営者にとってコスト面で優れた選択肢です。一度設定すれば、繰り返し借り入れが可能であり、毎回の登記手続きが不要なため、登録免許税や司法書士への報酬が節約できます。
たとえば、抵当権では複数回の借り入れごとに新たな登記が必要で、都度費用が発生します。一方、根抵当権では最初の一度だけで済むため、トータルの費用を大幅に抑えられるのがメリットです。こうしたメリットから、根抵当権は事業資金調達において広く利用されています。
デメリット
根抵当権には利便性がある一方で、注意すべきデメリットも存在します。根抵当権が設定されている場合、ほかの銀行から新たに融資を受けるのが難しくなる場合があります。
これは、根抵当権の極度額が実際の借入額より大きい場合があり、その不動産に後順位で融資を行う銀行が少ないためです。また、債務が完済されても根抵当権は自動的に消滅せず、債権者との合意が必要になるため、完済後の処理に手間がかかります。
根抵当権の活用例
根抵当権は、繰り返し融資が想定される場合に利用される場合が多く、主に以下のケースで活用されています。
- 事業用資金の融資
メインバンクが顧客企業に対して、複数回にわたり事業用資金の貸し付けをする際、そのすべての債権を担保するため、不動産に根抵当権を設定する
- リバースモーゲージによる生活資金の融資
自宅の不動産を担保に、定期的な生活資金の貸し出しを受ける際、根反当権を設定して、繰り返しの融資に対応する
根抵当権に関する民法で定められたルール
次は、根抵当権に関する民法で定められたルールについて解説します。
- 極度額
- 被担保債権の範囲
- 根抵当権に関する事項の変更
- 元本の確定
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
極度額
極度額とは、根抵当権を設定する際にあらかじめ定められる担保の上限額です。根抵当権は複数の債権を対象とするため、債務者の負担を明確にするためにも極度額が必要です。
一般的に、この上限額は貸付額よりも高く設定され、利息や損害賠償などもカバーします。たとえば、貸付額の1.2〜1.4倍程度が基準となる場合が多いです。また、根抵当権が変更される際には、債務者の同意が必要で、元本確定後には極度額の減額も可能です。
被担保債権の範囲
根抵当権は、特定の債権ではなく、ある範囲に属する複数の不特定債権を担保する権利です。この債権の範囲を「被担保債権の範囲」といい、民法によってその範囲を明確に定めなければなりません。
具体的には、債務者との継続的な取引にもとづくものや、特定の取引契約から生じる債権、手形や小切手にもとづく請求権、または電子記録債権などが該当します。これにより、根抵当権は幅広い取引を担保できる柔軟な仕組みとなっています。
根抵当権に関する事項の変更
被担保債権の範囲や債務者の変更は、元本が確定する前に限って可能であり、その際にほかの第三者の承諾は不要です。しかし、変更が登記されない場合は、変更がなかったものとみなされます。
また、極度額の変更には利害関係者の承諾が必要です。利害関係者には、同順位や後順位の担保権者、仮登記権利者などが含まれ、これらの承諾なしの場合、変更は行えません。
元本の確定
根抵当権の「元本確定」とは、特定されていなかった債権を明確にして、それ以降の新たな取引を担保の対象外とする手続きです。これにより、元本確定後に発生する債権は根抵当権では担保されなくなります。
元本確定後は、未返済の債務が返済されると根抵当権は消滅します。元本確定の方法には、元本確定期日の設定や、根抵当権者・設定者からの確定請求などがあり、いずれも確定後は撤回ができません。これにより、根抵当権は普通抵当権と同様の役割を持てるようになります。
根抵当権とはでよくある3つの質問
最後に、根抵当権とはでよくある質問について紹介します。
- 質問1.根抵当権を譲渡する方法とは?
- 質問2.根抵当権のついた不動産の取引における注意点は?
- 質問3.根抵当権の抹消手順は?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.根抵当権を譲渡する方法とは?
根抵当権の譲渡については、根抵当権者がその権利を他者に移す方法を指し、全部譲渡、分割譲渡、一部譲渡の3種類があります。
- 全部譲渡
根抵当権全体が譲渡され、譲受人の債権が担保される
- 分割譲渡
根抵当権を二分して一方を譲渡して、それぞれ独立した担保権となる。それぞれの極度額が元の根抵当権の極度額になるように決める必要がある
- 一部譲渡
譲渡人と譲受人が根抵当権を共有しながら、根抵当権の一部譲渡が行われる。譲渡には根抵当権設定者の承諾が求められ、未確定の債権を担保するため、設定者に予期しない影響がおよぶのを防止する
質問2.根抵当権のついた不動産の取引における注意点は?
根抵当権が設定されている不動産を売却する際は、根抵当権を消滅させる処理を行わなければなりません。根抵当権が残ったままでは買い手が見つかりにくいため、売却前に根抵当権を消滅させるか、売却後にすみやかに消滅手続きを進める準備をしておく必要があります。
元本確定後の債務を完済するか、債権者と協議して合意を得たうえで、根抵当権を抹消する方針を決めてから売却活動を進めるのが望ましいです。
なお、不動産売却の悩みの相談先については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【プロが教える】不動産売却の悩みはどこに相談すればいい?内容別に専門家を詳しく解説!
質問3.根抵当権の抹消手順は?
根抵当権の抹消手順は、以下のようなステップで進められます。
- 金融機関に根抵当権を抹消する意思を伝える
継続的な融資が不要な場合、現在の債務を完済して、抹消を希望する旨を金融機関に伝えると、消去書類を了承できる
- 法務局で抹消手続きを行う
金融機関から受け取った書類を持参して、対象不動産を管轄する法務局で抹消登記を申請する。審査が完了すると、抹消が正式に認められる
なお、根抵当権の抹消方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【プロが教える】根抵当権の抹消方法は?抵当権との違いや必要書類、抹消しないリスクを徹底解説!
まとめ
本記事では、根抵当権の概要やメリット・デメリット、民法で定められたルールをご紹介しました。
根当権とは、複数回にわたる借入を権利するために設定される権利で、抵当権とは異なり、一度設定すれば同じ権利で何度も融資を受けられる点が特徴です。しかし、根抵当権が設定されている場合、ほかの銀行から新たに融資を受けるのが難しくなる場合があります。
根抵当権は、事業用資金の融資やリバースモーゲージによる生活資金の融資で活用される場合が多いです。また、民法で定められた根抵当権に関するルールがあり、担保の上限額である極度額や、特定の債権ではなく、複数の不特定債権被担保債権の範囲を定めなければなりません。
さらに、被担保債権の範囲や債務者の変更は、元本が確定する前に限って可能であり、その際にほかの第三者の承諾は不要です。しかし、極度額の変更には利害関係者の承諾は必須となります。ほかにも、元本の確定についても規定されています。
これらのルールを理解して、根抵当権の手続きを行うようにしましょう。
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