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2023.06.22
不動産売却にかかる税金の計算方法|譲渡所得の控除制度や節税ポイントをわかりやすく解説!
不動産の売却益には税金が課されます。これは個人の取引でも同様です。そのため不動産を売却する際は、売却益に対してどのくらいの税金がかかるのか、計算方法も含めて理解しておく必要があるでしょう。
本記事では不動産売却にかかる5つの税金と税金の計算方法、および不動産売却にかかわる控除や節税のポイントを詳しく解説します。不動産の売却を検討していて税金の計算方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
不動産売却は税金がかかる?
不動産を売却する際、大きく分けて以下2種類の税金が課されます。
- 手続きの際に課される税金
- 売却益に課される税金
手続きの際に課される税金には、登録免許税と印紙税、消費税の3種類があります。売却益に対する税金についてですが、不動産の売却益に対しては譲渡所得税といい、所得税と住民税が課されます。ここからそれぞれの税金について、より詳しく解説します。
不動産売却にかかる4つの税金
ここからや不動産売却にかかる以下の4つの税金について、仕組みや計算方法を詳しく解説します。不動産の売却にかかわる税金を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
- 譲渡所得税(所得税・住民税)
- 登録免許税
- 印紙税
- 消費税
1.譲渡所得税(所得税・住民税)
不動産売却時に売却益が生じた場合には「譲渡所得」として税金の支払いが必要です。譲渡所得とは、不動産の売却によって得られた収入から、売却時の経費や取得時の費用を差し引いた金額のことを指します。建物については、減価償却費用も考慮する必要があります。
譲渡所得に関連する税金は、所得税、住民税、復興特別所得税の3つです。復興特別所得税は、東日本大震災の復興を支援するための税金であり、2037年までの期間で支払いが求められます。
譲渡所得にかかる税率は、不動産の保有期間や自己居住用の不動産かどうかによって異なります。具体的には下表の通りです。そのほか、10年超所有軽減税率の特例もあります。
短期譲渡所得 |
所有期間5年以下 |
税率:39.63%(所得税:30.63%、住民税:9%) |
長期譲渡所得 |
所有期間5年超 |
税率:20.315%(所得税:15.315%、住民税:5%) |
なお不動産売却によって譲渡所得が発生した場合は、年度末の確定申告が必要です。
2.登録免許税
登録免許税とは、不動産取引や会社登記などの際に課される税金です。新築建物の所有者を登録する保存登記や、不動産の売買により所有者が変わる場合には、「所有権移転登記」と呼ばれる手続きが必要となります。この手続きにより、不動産の所有者情報が登記簿に登録されます。
登録免許税の支払いは、登記に関連する費用として請求されます。司法書士の報酬や書類の取得にかかる実費とともに、登記申請時には印紙税を支払います。売主と買主の両方が負担する必要があるものです。
3.印紙税
印紙税とは、特定の書類である不動産の売買契約書などにかかる税金のことです。印紙税は、書類に収入印紙を添付して消印をすることで納めます。
印紙税の金額は、書面に記載された契約金額によって異なります。2024年3月31日まで、不動産売買契約や建築請負契約などについては、印紙税に軽減税率が適用される特例があります。以下は納める金額の一例です。
契約金額(売却益ではない) |
本則税率による印紙税額 |
軽減税率による印紙税額 (2024年3月31日まで) |
100万円を超え500万円以下 |
2000円 |
1000円 |
500万円を超え1000万円以下 |
1万円 |
5000円 |
1000万円を超え5000万円以下 |
2万円 |
1万円 |
5000万円を超え1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
1億円を超え5億円以下 |
10万円 |
5万円 |
4.消費税
不動産を売却するときは、不動産会社に仲介を依頼することが一般的です。その際、不動産会社に支払う仲介手数料には、消費税が加算されます。
仲介手数料は売却価格に応じて金額が決まり、売却価格によって消費税は変わります。以下の表にしたがって売買価格を区分し、仲介手数料を算出します。
不動産の取引額 |
仲介手数料の上限額 |
200万円以下 |
5.5%+消費税 |
200万円を超え、400万円以下 |
4.4%+消費税(上限18万円) |
400万円を超える金額 |
3.3%+消費税 |
参考:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
不動産売却にかかる譲渡所得税の計算方法
不動産の売却益は譲渡所得となるため、譲渡所得税の支払いが必要です。譲渡所得税は、所得税、復興特別所得税、住民税を合算した税金のことを指します。また譲渡所得税は、他の所得とは別に計算される分離課税の対象となります。
不動産売却益は「不動産が売れた価格」ではなく、売却価格から取得費や譲渡費用などの各種費用を差し引いた純粋な利益を指します。取得費と譲渡費用は、以下のように定義されます。
- 取得費=不動産を購入した際にかかった費用(不動産購入費用や購入時の仲介料、登録免許税など)
- 譲渡費用=不動産を売却する際にかかる費用(不動産仲介費用や印紙税、立退料など)
不動産売却益の計算方法
ここからは不動産売却益の計算方法を、より詳しく解説します。不動産売却益とは具体的にどのような利益を指すのかを見ていきましょう。
譲渡価格の計算方法
不動産の売却で得た譲渡価格には「固定資産税清算金」を加えて計算します。固定資産税清算金とは、買主から売主に支払われる固定資産税と都市計画税のことです。
不動産の所有者は毎年1月1日時点で固定資産税と都市計画税を支払う必要があります。しかし、年途中で売却された場合は売却後の期間に対応する税額を計算し、買主から売主に「固定資産税清算金」を支払うことになっています。譲渡価格は以下のように、不動産の売却価格に「固定資産税清算金」を加算して計算されます。
- 譲渡価格 = 不動産の売却価格 + 固定資産税清算金
取得費の計算方法
次に取得費を計算します。取得費とは、不動産を購入した際にかかった費用のことです。不動産売却益は、譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いたものになります。一般的な取得費は、以下の費用を合算して算出します。
- 不動産の購入代金
- 不動産の建築費
- 購入時の仲介手数料などの手数料
- 設備費や改良費
- 不動産購入時の登録免許税
- 不動産取得税 など
ただし不動産が建物の場合には、価値が減少していく減価償却費を購入金額から差し引く必要があるため、注意が必要です。
譲渡費用の計算方法
譲渡費用は、不動産を譲渡する際にかかる費用を指し、具体的には以下のようなものが含まれます。
- 不動産売却を業者に依頼した場合の仲介手数料
- 売主が負担した印紙税
- 立退料
- 土地売却のための建物取り壊し費用
譲渡費用を踏まえた不動産売却益の具体的な計算式は、以下の通りです。
- 不動産売却益 = 譲渡価格 ー 取得費 ー 譲渡費用
税率は不動産所有期間によって異なる
不動産の売却益には所有期間によって、以下の通り異なる税率が適用されます。
対象不動産の所有期間 |
譲渡所得税の税率 |
所有期間が5年以下 |
39.63% |
所有期間5年超 |
20.315% |
所有期間は、売却した年の1月1日時点で計算されます。ただし、引渡し日を基準に考える場合や契約日を採用する場合もあります。相続した不動産の場合は、亡くなった方が取得した日から所有期間が計算されます。
不動産売却の譲渡所得を控除する5つの制度
ここからは不動産売却の譲渡所得の控除に関する、以下の5つの制度を詳しく解説します。不動産の売却益に対しての税金だけでなく、控除に関する情報も理解することで節税が可能です。しっかりポイントを押さえて必要な手続きを行いましょう。
1.マイホームを売却する場合は3000万円の特別控除
マイホームの売却においては、最大で3,000万円まで特別控除が適用されます。具体的な計算式は、以下の通りです。
- 譲渡所得税=不動産売却益(譲渡価格−取得費−譲渡費用−最大3,000万円)×税率
特別控除が適用されるためには、以下の条件に該当している必要があります。
- 自分が住んでいた家や敷地、借地権を売却する
- 以前住んでいた家を売却する場合は、住まなくなった日から3年以内に売却する
- 売却した年の前年および前々年に特別控除や譲渡損失の損益通算、繰越控除、買換え特例などの特例を受けていない
- 売主と買主が特別な関係(親子や夫婦など)でない
これらの条件を満たすマイホームの売却には、大抵の場合、特別控除が適用されます。
売却価格が3,000万円以下であれば、譲渡所得税の支払いは不要となります。ただし売却価格が3,000万円を超える場合は、3,000万円を差し引いた金額に対して税率が適用されます。
2.10年以上居住したマイホーム売却は軽減税率の特例
マイホームを10年以上所有し、売却した場合には特別な税率が適用されます。通常、所有期間が5年を超える不動産の税率は20.315%です。
しかし特例が適用されると、利益のうち6,000万円以下については低い税率が適用されることになります。特例が適用される条件は、以下の通りです。
- 自己居住用の家または敷地の売却である
- 売却した年の1月1日時点で、売却した家または敷地の所有期間が10年以上である
- 売却した年の前年および前々年にこの特例を受けていない
- 売却した家または敷地について、他の特例(買換え特例や交換の特例など)を受けていない(※ただし、3,000万円の特別控除と併用することは可能)
売主と買主が親子や夫婦といった特別な関係でない限り、ほとんどの場合、上記の条件を満たすマイホームの売却には特別税率が適用されます。特別税率を利用することで、利益を最大限に保持することができます。なお、特例と特別控除の併用も可能です。
3.特定の居住用財産を買い替えた場合は長期譲渡所得の課税特例
マイホームを売却して買い替えをする際には、税金を将来に繰り延べることができる特例があります。この特例は実際に税金が控除されるわけではなく、将来の不動産売却時に繰り延べ分が上乗せされるという仕組みです。
たとえば2,000万円の不動産売却益があった場合、買い替え時には課税されずにそのまま保留されます。そして将来、買い替えた不動産を売却する際に、その2,000万円が上乗せされて課税されることになります。特例が適用される条件は、以下の通りです。
- 自己居住用の家または敷地の売却である
- 売却代金が1億円以下である
- 売却した年の1月1日時点で、売却した家や敷地の所有期間が共に10年以上である
- 売却した年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換える
- 他の特例(3000万円の特別控除や軽減税率の特例など)を受けていない
- 売主と買主が特別な関係(親子や夫婦など)でない
ただし他の特例が併用できないため、注意が必要です。
4.被相続人の居住用財産(空き家)を売却した場合の特例
相続した空き家を売却する際には、最高3,000万円の特例控除が適用されます。この特例は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」と呼ばれ、マイホーム売却の特例とは異なる条件を満たす必要があります。特例が適用される条件は、以下の通りです。
- 建築年が昭和56年5月31日以前である
- 相続の開始時点で被相続人以外の居住者がいなかった
- 相続開始日から3年経過する年の12月31日までに売却する
- 売却代金が1億円以下である
- 売却した家や敷地について、他の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用の場合の特別控除など)の適用を受けていない
- 売主と買主が、親子や夫婦など特別な関係でない
5.相続財産を譲渡した場合は取得費の特例
相続や遺贈を通じて得た財産を一定の期間内で移転した場合、相続税の一部を取得費に上乗せすることが可能です。
ただしこの規定は譲渡所得にだけ該当し、事業所得や雑所得では該当しませんので注意しましょう。特例が適用される条件は、以下のようになります。
- 相続または遺贈を通じて財産を得た個人であること
- 相続税が課せられた財産であること
- 相続が始まった日の次の日から、相続税の申告期限の翌日までの3年間で財産を移転していること
計算方法では、相続税の額を取得費に足す額が算出されます。一方でその額が譲渡利益を上回る場合は、譲渡利益に相当する額に制限されるため注意が必要です。
不動産売却で節税するための3つのポイント
ここからは不動産売却で説明するための、以下の3つのポイントを詳しく解説します。正しい節税法を知って、正しく納税しましょう。
1.購入額が証明できる書類を用意する
不動産売却で節税するには、不動産の購入額が証明できる書類を用意する必要があります。万が一購入代金がわからない場合は、売却代金の5%で取得したものとして計算します。
ただしこの計算方法では「売却益」が大きく計上され、課税額が大きくなりがちです。そのため可能な限り、不動産を購入した額を証明できる書類を探し、用意しておきましょう。
売買契約書でなくても、通帳の記録などで確認できれば購入額として認められる場合もあるため、購入額が証明できる書類を探した上で、税務署に相談してみてください。
2.控除制度を利用する
不動産売却で節税するには、先ほど紹介した控除制度をもれなく利用しましょう。節税に有益な制度は、主に以下の5つが挙げられます。
- 3,000万円の特別控除(マイホームの売却時)
- マイホームの売却時の軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換えに関する長期譲渡所得の課税特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)に関連する譲渡所得の特別控除制度の特例
- 相続財産の譲渡時における取得費の特例
これらの制度を適切に活用することで、効果的な節税が実現できます。
3.売却のタイミングを検討する
不動産売却で節税するには、不動産を売却するタイミングを間違えないことが重要です。市場の状況や税金の特例を受けられる期限や不動産の所有期間によって、税率や特例の有無といったさまざまな条件が変化します。
不動産の適切な売却の時期に迷った場合は、信頼できる不動産業者を見つけ、相談することをおすすめします。なお、次のページでは岡山市で不動産の売買に強みを持つ不動産会社を紹介するとともに、失敗しない不動産選びのポイントも解説しています。
岡山市で良い不動産もしくは不動産会社を探している方は、ぜひ参考にしてみてください。
※関連記事:【2023年度最新】岡山市にある売買に強い不動産10選|失敗しない選び方のポイントも紹介! | ビリーフ株式会社
不動産売却の税金計算に関するよくある質問
ここからは不動産売却における税金の計算に関して、よくある以下の2つの質問を詳しくみていきます。不動産売却時の税金について疑問や不安がある方は、よく読んでおきましょう。
質問1.譲渡所得が出た場合、確定申告は必要ですか?
不動産売却による譲渡所得が出た場合、もれなく確定申告が必要です。譲渡所得とは、不動産売却によって得られる利益のことを指します。
この譲渡所得に対して、所得税と住民税が課されます。譲渡所得税は、売却価格から取得費用や必要経費を差し引いて算出します。取得費用とは不動産を購入した際の費用、必要経費とは不動産売却にかかる費用を指します。
譲渡所得に対しては住宅ローン控除や長期所有控除といった控除制度があり、これらの控除制度を利用することで、譲渡所得税を節税することが可能です。
住宅ローン控除とは住宅ローンの利子分が所得税から控除される制度で、利用することで住宅ローンの返済負担を軽減できます。長期所有控除とは不動産を長期間所有していた場合に適用される控除制度で、譲渡所得税を節税することが可能です。
質問2.不動産売却の税金計算について、シミュレーション例を教えてください。
【例1】2000万円で購入したマイホームを2500万円で売却した場合
2000万円で購入したマイホームを2500万円で売却した場合の税金のシミュレーションを行なっていきます。譲渡所得税の基本的な計算式は、以下のようになります。
- 譲渡所得 = 売却代金 – 購入費用 – 譲渡費用
上記計算式に基づき、譲渡所得は以下のように求められます。
- 譲渡所得 = 2,500万円-2,000万円-200万円(‐控除額)
続いて譲渡所得税を求めます。譲渡所得税を求める計算式は、以下の通りです。
- 譲渡所得税=譲渡所得 × 税率(20.315%)
上記より、譲渡所得税は以下のように算出できます。
- 譲渡所得税 =(譲渡所得609,450円 – マイホームにかかる控除3,000万円)× 20.315%
この例のようにマイホームを売却した場合、3,000万円の控除が適用されるため税金はかからない、ということになるのです。
【例2】購入額不明のマイホームを5000万円で売却した場合
購入額がわからないマイホームを5,000万円で売却した場合の税金のシミュレーションを行います。譲渡所得税の基本的な計算式は、以下のようになります。
- 譲渡所得 = 売却代金 – 購入費用 – 譲渡費用
上記計算式に基づき、譲渡所得は以下のように求められます。
- 譲渡所得 = 5,000万円-(売却価格の5%・250万円)-300万円(譲渡費用)(‐控除額)
続いて譲渡所得税を求めます。譲渡所得税を求める計算式は、以下の通りです。
- 譲渡所得税=譲渡所得 × 税率(20.315%)
上記より、譲渡所得税は以下のように算出できます。
- 譲渡所得税 =(44,500,000円 – マイホームにかかる控除3,000万円)× 20.315%
この例のようにマイホームを売却した場合、3,000万円の控除が適用されるため、2,945,675円の税金を支払う計算となります。
まとめ
不動産の売却において利益が出た場合は、不動産の条件や資料、控除の有無によって税金が決まります。不動産売却に伴い確定申告を行うにあたり、計算方法や算出した金額に不安や疑問がある場合は、税理士や税務署といった専門家や、売却する際に仲介してくれた不動産会社のサポートを受けると良いでしょう。
まずはこの記事で紹介した方法を参考に、おおまかな税金の額を把握したうえで、節税する手段を探ってみましょう。なお「ビリーフ株式会社」は不動産の買取・仲介だけではなく、不動産に関するさまざまなご相談を承っております。
不動産の購入時や売却時のわかりにくい諸費用や流れについても丁寧にご説明させていただきますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。⇒公式LINEアカウントによる不動産のお悩み相談はこちらから